研究課題
本研究では、解析者の主観によるバイアスを防ぐため、Belle検出器シミュレーションを含めたモンテカルロシミュレーションを使ってB→D*τν信号とその背景事象の特徴を詳細に調べ、τ→πν, ρνというτ崩壊を用いた信号再構成手法を開発した後に、この手法を実データに適用する。本年度は、当初の計画通り信号抽出手法の確立および実データを使ったシミュレーションサンプルの補正を行い、6月の研究会にて成果を報告した。さらに、荷電B中間子モードに加えて中性B中間子のB→D*τν崩壊を解析に加えることで、統計精度を約1.4倍向上させることに成功した。その結果、本崩壊におけるτ偏極度を約0.6の統計精度で測定するとともに、崩壊分岐比測定についても過去の測定と同等の統計精度を期待できることを示した。この成果を、9月に行われた日本物理学会秋季大会において報告した。本解析では、"ハドロン+ニュートリノ"という終状態を使っているため、B中間子のハドロニック崩壊が主要な背景事象となる。B中間子のハドロニック崩壊は複雑なハドロン化過程を経るために測定が難しく、実験結果がない部分が多いため信頼できるシミュレーションを行うことができない。従って、本解析では終状態の特徴によってハドロニック崩壊を分類し、実験的測定結果がない成分については信号事象を含まない実データを用いてコントロールすることで、背景事象を見積もることとした。これをもって測定手法の確立がほぼ完了し、過去の測定とは異なる終状態を使ってB→D*τν崩壊の崩壊分岐比を測定し、また本崩壊ではまだ測定の前例がないτ偏極度を測定することで新物理探索ができることを示した。これらの成果を3月のWorld Research Unit for Heavy Flavor Particle PhysicsSymposium 2016および日本物理学会年次大会にて発表した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A
巻: 787 ページ: 293-296
10.1016/j.nima.2014.12.082