平成26年度前半は、昨年度に引き続き資料の実見調査を中心に研究をおこなった。近畿一円をはじめ、群馬県、神奈川県、長野県、三重県、福井県、島根県、福岡県の博物館や資料館、埋蔵文化財センターなどを訪問し、大刀、耳飾を中心とする古墳・三国時代の金工品の調査を実施した。このように日本出土資料を中心に調査を進める一方で、6月には大韓民国での資料調査も実施し、ソウルや京畿道周辺の資料を図化・撮影した。特に、まだ発掘調査や報告書づくりの技術が韓国で成熟していなかった1970年代に大学博物館などによって調査され、実態がよくわからない資料を、多数、実物確認できたことが大きい。 今年度の調査は、研究機関が所蔵している資料のほかにも、個人蔵のあまり知られていない資料についても調査の交渉を積極的に行い、世に公表されていない実見困難な出土品の図化を何件か実現できた。先に述べた今年度の韓国での調査成果も含め、こうした未公表のデータは今後公表の方法を検討して、何らかの形で学界に還元したいと考えている。 平成26年8月1日付で独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所にアソシエイトフェローとして就職したため、7月末をもって特別研究員奨励費の受給を辞退したが、就職後に26年度の前半期に資料調査で集めたデータをまとめ、その一部、古墳時代出土装飾大刀の系譜に関する検討結果を、2014年12月に開催された第11回古代武器研究会の場で発表し、発表資料集に論文の形でまとめて発表した。残りのデータについては、さらなる追加調査を実施しつつ今年度以降順次公表していく予定である。
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