研究課題/領域番号 |
13J03105
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡 健治 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心筋梗塞 / pH感知性GPCR / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
これまでの研究において、4種類存在するpH感知性GPCRファミリーのうち、心臓においてはGPR4の発現が最も高いことを、リアルタイムRT-PCR法により明らかにしていた。そこで本年度は、正常時の心臓においてGPR4がどの細胞に多く発現しているかを明らかにしようとした。in situ hybridization法による組織染色を行ったところ、GPR4のmRNAが心臓の血管周りに存在する内皮細胞に多く発現している可能性を示す結果が得られた。このことを詳細に調べるために、健常マウスから摘出した心臓をコラゲナーゼで処理し、回収した細胞から心線維芽細胞と内皮細胞を、それぞれの細胞表面マーカー分子の発現を指標にFACSAria IIIを用いてソーティングした。ソーティングした細胞よりRNAを回収し、リアルタイムRT-PCR法によりGPR4の発現量を測定したところ、GPR4は、内皮細胞のマーカーであるCdh5の発現が顕著に認められる内皮細胞において、多く発現していることが明らかになった。一方で、心線維芽細胞のマーカーであるCol1a1の発現が顕著に認められる心線維芽細胞においては、GPR4はほとんど発現していなかった。さらに、GPR4 KOマウスにおいて心筋梗塞施術後の心機能が改善していた理由を明らかにするために、WTマウスとGPR4 KOマウスに心筋梗塞を施術し、施術後1日目において心臓よりRNAを回収した。リアルタイムRT-PCR法により病態関連因子の発現量を比較したところ、GPR4 KOマウスにおいて、炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞接着因子の発現量が、総じて減少していることが明らかになった。以上の結果より、内皮細胞に発現しているGPR4が、虚血直後における急激な細胞外のpH低下を感知し、心筋梗塞後の炎症応答に影響を及ぼしている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究において、我々は、GPR4を多く発現している細胞を同定することができた。さらに、GPR4ノックアウトマウスを用いた解析から、内皮細胞に発現しているGPR4が、心筋梗塞時に活性化され、炎症応答を引き起こす1つのトリガーとなっている可能性を明らかにすることができた。今後は、活性化されたGPR4がどのようなシグナル伝達を介して炎症応答を促進するかを明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ヒト由来の内皮細胞であり、GPR4を比較的多く発現していると報告されているHUVECに低pHによる刺激を施して、どのようなシグナル伝達経路を介して炎症応答が誘導されるかを明らかにしようとしている。さらに、HUVECで明らかにされたシグナル伝達の妥当性を、心筋梗塞処置後のGPR4ノックアウトマウスを用いて解析しようとしている。さらに、GPR4の活性を選択的に阻害する化合物を心筋梗塞処置後のマウスに投与し、心筋梗塞施術後の心機能を評価することで、その治療的意義についても明らかにしようとしている。
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