半自然草原の生物多様性を保全するには、多様性減少をもたらす要因およびメカニズムを解明することが最重要である。植物(生産者) 群集は生態系の基盤として機能しており、その多様性減少は植食者群集の多様性の低下を引き起こすと考えられる。本研究は、半自然草原において、土地利用形態の変化が、植物群集の多様性減少・種組成変化を引き起こし、それに伴って、植食性昆虫群集の多様性減少・種組成変化が引き起こされるメカニズムを解明する。結果から、多年草、チョウ・バッタ群集は、伝統的に管理されてきた土地利用で最も種多様性が高かった。一方、一年草は、集約的管理と伝統的管理で種多様性が高く、放棄地では低かった。多年草が減少することで、チョウ・バッタ群集が減少することが明らかとなった。チョウ類およびバッタ類の機能種群ごとの減少傾向は、機能群間で一貫しておらず、特定種群の減少が全体の多様性を減少させるという傾向は、見いだせなかった。さらに、消失・減少する種の特性をnull-model解析により検証したところ、個体数が元来少ない種が土地利用の変化に伴い消失もしくは減少している傾向にあった。 本研究から、半自然草原における植食性昆虫群集の多様性減少は、人為のインパクトが土地利用の変化によって増減し、資源である植物の機能種群(多年草)多様性が変化することで、生息地の環境収容力が低下し、個体数の少ない植食者種から消失することが要因であると考えられた。
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