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2014 年度 実績報告書

最初期の宇宙の熱史と暗黒物質の生成および発展についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 13J03160
研究機関東京工業大学

研究代表者

齋川 賢一  東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード宇宙論 / 素粒子論 / 暗黒物質 / 超対称性理論 / アクシオン / バリオン数生成 / 数値シミュレーション
研究実績の概要

本年度の研究では、昨年度に引き続きアクシオン暗黒物質の生成過程に関するより詳細な解析を行う一方で、超対称性理論に基づく宇宙の熱史に関する研究を行った。
超対称性を持った標準模型は超弦理論等のより根源的な理論の低エネルギー極限として実現されていると期待されており、最初期の宇宙の進化においても重要な役割を果たしたと考えられている。しかしながら、単純な超対称模型は近年のLHC実験において厳しく制限され始めており、模型の拡張の可能性が議論されている。一つの可能性としては、Rパリティ(通常の物質粒子を偶、超対称性粒子を奇とするパリティ)の破れを導入すると最も軽い超対称性粒子が不安定となってLHCにおけるシグナルが大きく変化し、厳しい制限を逃れられるというシナリオが考えられる。本年度の研究ではそのような模型に着目して、模型に対する宇宙論的制限について議論した。特に、Rパリティの破れからもたらされる新たな相互作用項によって起こるスカラー場のダイナミクスを利用することにより、宇宙の物質・反物質非対称性が効率よく生成されることを示した。また、様々な観測的制限と無矛盾であるという要請から、Rパリティの破れの度合いは緩く、超対称性粒子の質量は比較的重くなければならないことを示した。
アクシオン暗黒物質の生成過程に関する研究では、最近の高解像度のスカラー場の格子シミュレーションを用いる事により、位相欠陥の崩壊に伴い生成されるアクシオン残存量を従来よりも高い精度で評価した。特に、アクシオンが暗黒物質の主要な成分を占める場合の対称性の破れのスケール又はアクシオンの質量の値について極めて定量的な予言を行う事が可能となった。この研究の結果、位相欠陥の寄与を含めると従来知られていたよりも高いアクシオンの質量が予言され、そのような質量領域は将来のアクシオン検出実験で検証可能であることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Rパリティを破るような超対称標準模型について宇宙のバリオン数を説明するという観点から制限を与えるという研究目的に対し、本年度の研究ではRパリティを破る相互作用を介して生成されるバリオン数の評価を行い、観測的制限と無矛盾となるパラメター領域を見積ることができたため、このようなシナリオについては当初の研究目的をおおむね達成することができたと言える。
一方、位相欠陥から生成されるアクシオン暗黒物質残存量の評価は過去にも様々な研究がなされていたが、解析手法に起因する不定性が大きいという点が問題となっていた。そこで、本研究では計算機環境を向上させることにより従来知られていたよりも高い精度で残存量評価を行うことを研究計画として掲げた。本年度はこれらの研究目的を達成すると共に、これまでの数値計算手法を徹底的に見直した上で、現状で得られている計算結果の不定性の要因についての詳細な議論を行った。近年、アクシオン暗黒物質を探査する様々な実験計画が提案されてきているが、本研究はそれらの実験的アプローチに対する極めて定量的な理論予言を与えると共に、実験感度と理論予言の不定性との比較を可能とするものであり、模型を実験的に検証する上で極めて意義深い成果であると考えられる。以上の理由により、当初の計画に沿っておおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

これまでの研究において、アクシオン暗黒物質とインフレーション後の宇宙の熱史との関係、および模型に対する観測的制限について重点的に調べてきたが、今後の研究では超対称性理論に基づく宇宙の熱史について詳しく調べていく予定である。特に、本年度の研究で扱ったRパリティの破れを考慮した模型に限らず、一般に超対称パートナー粒子が存在する模型に対して、暗黒物質生成機構およびインフレーション模型との整合性を考慮し、宇宙論的観点から制限を与える可能性を議論していく予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Axion dark matter from topological defects2015

    • 著者名/発表者名
      川崎雅裕、齋川賢一、関口豊和
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 91 ページ: 065014 1-25

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.91.065014

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Affleck-Dine baryogenesis with R-parity violation2014

    • 著者名/発表者名
      檜垣徹太郎、中山和則、齋川賢一、高橋智、山口昌英
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 90 ページ: 045001 1-20

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.90.045001

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 位相欠陥とアクシオン暗黒物質2015

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      日本物理学会 第70回年次大会
    • 発表場所
      早稲田大学早稲田キャンパス(東京都新宿区)
    • 年月日
      2015-03-21
  • [学会発表] 位相欠陥とアクシオン暗黒物質2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      第27回理論懇シンポジウム
    • 発表場所
      国立天文台三鷹キャンパス(東京都三鷹市)
    • 年月日
      2014-12-24 – 2014-12-26
  • [学会発表] Affleck-Dine baryogenesis with R-parity violation2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      Miniworkshop on cosmology
    • 発表場所
      APCTP, Pohang, Korea
    • 年月日
      2014-12-18
    • 招待講演
  • [学会発表] Axion dark matter from topological defects2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      JGRG24
    • 発表場所
      カブリ数物連携宇宙研究機構(千葉県柏市)
    • 年月日
      2014-11-10
  • [学会発表] Rパリティの破れを利用したAffleck-Dineバリオン数生成2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      日本物理学会 秋季大会
    • 発表場所
      佐賀大学本圧キャンパス(佐賀県佐賀市)
    • 年月日
      2014-09-20
  • [学会発表] Affleck-Dine baryogenesis with R-parity violation2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      SUSY2014
    • 発表場所
      University of Manchester, Manchester, United Kingdom
    • 年月日
      2014-07-24
  • [学会発表] Production and evolution of dark matter axions in the early universe2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      AXION-WIMP 2014
    • 発表場所
      CERN, Geneva, Switzerland
    • 年月日
      2014-07-01
    • 招待講演
  • [学会発表] Affleck-Dine baryogenesis with R-parity violation2014

    • 著者名/発表者名
      齋川賢一
    • 学会等名
      PASCOS2014
    • 発表場所
      University of Warsaw, Warsaw, Poland
    • 年月日
      2014-06-26
  • [備考] 東京工業大学理工学研究科基礎物理学専攻宇宙物理学理論グループホームページ

    • URL

      http://www.th.phys.titech.ac.jp/cosmo/

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公開日: 2016-06-01  

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