研究課題
本研究の概要は、腫瘍内低酸素や腫瘍間質といった、腫瘍の悪性度や治療抵抗性の指標のイメージ化に取り組み、各々の関連性を解析することにある。二年目は、昨年度行った撮像条件に基づいて、間質量の大きく異なる三種類の細胞種(U251、BxPC-3、CFPAC-1)を用いた腫瘍モデルに対して潅流CTイメージングと低酸素PET/CTを施行した。それらの腫瘍切除後の標本に対してHE染色と、腫瘍間質に相当するαSMA染色に加えて、血管内皮細胞、低酸素細胞に相当する蛍光多重染色を行い、それらの画像に対して解析ソフトウェアを用いて定量解析した。結果、潅流CTで得られる腫瘍間質パラメータのFisはαSMA染色の陽性度と強い相関が得られ、in vivo イメージングで腫瘍間質量の評価が可能であることが示唆された。次に低酸素パラメータのFMISO集積と血流パラメータのFv と腫瘍間質パラメータの相関を調べた。これまでに、腫瘍間質と腫瘍内低酸素は相互に関連して増強しあうとの報告があったが、我々の腫瘍モデルにおいてはこれまでに示唆されている関係性とは異なり、腫瘍間質密度の高い部位はFMISO集積が低く、中程度の負の相関であった。血流速度パラメータのFvと腫瘍間質密度パラメータのFisは正の相関があったことから、我々のモデルにおける腫瘍間質は、比較的良好に潅流されているものと考えられた。これらの結果は皮下腫瘍モデルを用いたものであるが、移植腫瘍と発癌腫瘍とでは組織構築が大きく異なる可能性があり発癌腫瘍モデルでの検討が必要と考えられたため、京都大学消化器内科学講座との共同研究で膵癌自然発癌モデル(KPCマウス)を作成した。しかし、このマウスは実際には16週を過ぎても明確な腫瘍が確認できないばかりか、12週ごろから脳炎(両下肢の筋力低下と萎縮)を生じ、死亡する個体もあり、モデルとしては機能しなかった。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍間質のイメージング法については検討を終えて、腫瘍低酸素との関連性についても検討し、論文投稿可能な段階に至っているため。
上述内容の論文化を行う。同法はマウスモデルを用いた検討であるが、臨床応用を考慮に入れると現状ではスキャン回数などに改善の余地があるため、イメージングの精度を落とさない範囲でのスキャンの簡便化を図る。
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AJR Am J Roentgenol
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