研究課題/領域番号 |
13J03164
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大岩根 安里 同志社大学, 神学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | シオニズム / ハダッサ / ヘンリエッタ・ソルド / アメリカ・ユダヤ人 / イスラエル / パレスチナ / ジェンダー / 共生 |
研究概要 |
25年度は、ハダッサ(アメリカ・ユダヤ人女性シオニスト団体)が、1940年代の内部分裂に至る過程をジェンダーの視点から分析することに主眼を置いた。先行研究において、ハダッサは人種や宗教の分け隔てをすることなく、イスラエル建国以前のパレスチナで医療・福祉活動に従事したという点で、政治的シオニズムとは異なる点が強調される傾向にあるものの、ハダッサのシオニズム観を深く掘り下げて検討する試みは未だ不十分であると言える。そのため本研究は、ハダッサの活動を支える思想的背景を分析する点に特徴がある。本年度は以下の4点を中心に研究を進めた。1、ジェンダーの視点からハダッサを検討するにあたり、6月に日本女性学会において口頭発表を行なった。女性史、ジェンダーの専門家から用語の使用法をはじめ、有意義な指摘を受けることができた。これによりハダッサの先行研究内でジェンダーの定義に揺れがあることが明らかとなった。これらの成果として、日本語で発表することを踏まえ、日本語でのジェンダー研究の蓄積を反映させたものを次年度に論文として発表する予定である。2、米国で開催された国際会議、Association for Israel Studiesの第29回年次大会(6月)に参加し、最新の研究動向を把握することができた。ハダッサおよびアメリカ・シオニズムの専門家に資料の有無の問題について質問し、また報告者の現在の課題に関して助言を頂くことができた。3、また1940年代におけるハダッサの内部分裂の背景を探るために、1920年代のハダッサのシオニズム理念に関して1本の論文にまとめた。(13. 「雑誌論文」参照)4、The American Jewish Historical Society(ニューヨーク)で11月から約70日間、ヘンリエッタ・ソルド、ユダ・マグネスに関連する書簡、新聞記事、ハダッサの議事録(1920年代、1940年代)を中心に資料収集を行ない、現地でしか入手できない貴重な文献を収集することができた。帰国後は、収集した一次資料、文献の精読作業を進めた。(現在も継続中)その結果、以下の点が明らかになった。先行研究内でハダッサおよびアメリカ・シオニスト機構(ZOA)の会員数について未だ未整理であった状況に対し、4で集めた資料および国内調査で得た文献から、問題点を含めて整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
The American Jewish Historical Societyのアーカイヴで、長年ハダッサ・アーカイヴに勤務し、ヘンリエッタ・ソルドおよびハダッサの資料に精通している、Susan Woodland氏から、一次資料の分析に関して、また報告者の研究テーマについて、数々の貴重な助言を頂いた。また博士論文執筆に必要最低限の一次資料を収集することができた。(さらに必要となるものに関しては、あらためてリストを作成後、収集に努めたい。)
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今後の研究の推進方策 |
次年度の課題は、1. 現在行なっている、一次資料の精読を終了すること。2. ヘンリエッタ・ソルドが属していたイフードの思想の分析(バイナショナリズムの再検討)3. ソルドの友人でもあった、ユダ・マグネスの思想的背景とハダッサとの関わりを明らかにすることである。また、イスラエル、およびアメリカに居るハダッサおよびアメリカ・シオニズムの専門家の助言も引き続き得たいと考えている。本研究テーマは日本では未だ主体的に取り扱われていないことを顧み、先行研究の問題点をわかりやすく紹介すること、単に先行研究者の姿勢を引き継ぐのではなく、独自の視点から分析できるように努めたい。さらに本研究で得た成果を踏まえ、指導教授の指示に従い、博士論文の執筆に専念する予定である。
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