26年度は、以下の3点を中心に研究を進めた。 1)アラブ人とユダヤ人との共生を目指すシオニスト団体として知られるハダッサ(アメリカ・ユダヤ人女性シオニスト団体)は、1940から1943年にかけて立ち上げた研究会において、共生を目指すことよりも、ヨーロッパで難民化した同胞の救済が先決であるという結論に達した。その背景には、ダビッド・ベン=グリオンや男性中心的なアメリカ・シオニストらの、「女性は政治的活動には不向きである」という認識がハダッサのシオニズム理念を政治的な領域で実現するのを阻む圧力となっていた。このことを、『ユダヤ・イスラエル研究』に纏めた。
2)今年度も、11月末から約二ヶ月半にわたり、The American Jewish Historical Society(AJHS)(ニューヨーク)において研究調査を行った。2014年11月より、旧ハダッサ・アーカイヴの全ての資料が正式にAJHSに移行したため、昨年度閲覧することができなかった資料を収集することが可能となった。これにより当該研究に必要な資料の95%を収集した。調査を行った結果、研究調査の時点では、ハダッサの他の指導者による書簡や個人の日記に関する資料のほとんどが未整理であることが判明した。そのため、残りの5%程度は資料を確認することができなかったが、博士論文執筆において支障はないものと思われる。
3)ハダッサの設立者、ヘンリエッタ・ソルドと彼女の盟友ユダ・L・マグネスのシオニズム観を、「道義心」というキーワードをもとに纏め、『一神教世界6』に投稿した。このテーマは、文化的シオニズムのアメリカ化の分析にも繋がるため、引き続きその詳細を分析していくつもりであり、その一つとして、2015年6月に開催されるAssociation for Israel Studiesの第31回年次大会で報告することが決まっている。
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