研究課題/領域番号 |
13J03172
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
藤原 崇之 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | 細胞周期 / オルガネラ分裂・分配 / Cyclin/CDK / リン酸化 / 藻類 |
研究概要 |
本研究の目的は、オルガネラ分裂装置のリン酸化を手掛かりに、Cyclin/CDKによるオルガネラ分裂の「制御」機構を解析すること、またCyclin/CDKによるオルガネラ分配の制御機構を解明し、オルガネラと染色体の複製・分配の制御機構との共通点とその進化を明らかにすることによって、細胞内共生の仕組みと真核生物の成立を理解することであった。申請者らは単細胞性の紅藻シアニディオシゾン(シゾンと略す)において葉緑体の分裂装置を構成する葉緑体型ダイナミン(DRP5B)のリン酸化部位を同定し、それがCDKのコンセンサス配列を持つことを発見した。このリン酸化の意義を解明するために抗リン酸化DRP5B抗体を作成し、さらに野生型、非リン酸化型および模擬リン酸化型DRP5Bの誘導発現株およびノックイン株を作成した。DRP5Bに関する翻訳後修飾による制御の詳細は報告されておらず、研究が完成すれば葉緑体分裂を理解する上でも重要な知見になると考えられる。またオルガネラの分配機構に関して進化的な知見を得るために、シゾンとは系統的に異なる灰色藻シアノフォラを用いた。シアノフォラは通常葉緑体を1~2個持ち、細胞分裂時には2~4個となった葉緑体を分配させる。シアノフォラの葉緑体は細胞周期を通じて細胞核と結合しており、細胞分裂時にも葉緑体が染色体の分配と結合しながら娘細胞に分配されることが観察された。シゾンにおいても葉緑体がミトコンドリアを仲介して細胞核と結合しており、ミトコンドリアと共に染色体の分配に連携しながら分配される。オルガネラの分配が、厳密な制御を必要とする染色体の分配を利用することは、オルガネラを娘細胞への確実に分配するために有効な手段であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を遂行する上で重要な技術であるシゾンの形質転換株の作成効率を向上させ、変異型タンパク質の細胞内における解析が研究当初より容易になった。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸化DRP5B変異株の解析を行い、葉緑体分裂の制御機構を解明する。同様にミトコンドリア分裂装置の構成タンパク質であるDRP3およびMdalについても、リン酸化変異株を作成しミトコンドリア分裂の制御機構を解明する。一方で各種Cyclin/CDKの変異体を作成し、関連タンパク質のリン酸化状態の検証および・葉緑体とミトコンドリアの分裂に対する影響を解析し、オルガネラ分裂タンパク質の変異体解析の結果を総合して、Cyclin/CDKによるオルガネラ分裂の制御機構を解明する。
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