研究課題/領域番号 |
13J03183
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平野 照幸 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 太陽系外惑星 / トランジット法 / 視線速度法 / 位相光度変化 / 低質量星 |
研究実績の概要 |
2014年度は,以下の2つの研究を主に推進した。 1. 位相光度変化によるケプラー惑星候補天体の詳細解析 2. 低質量星周りの惑星探査のための視線速度解析ソフトの開発 以下ではこれらそれぞれについて詳しく述べる。 1.の研究の目的は,近年注目されている位相光度変化法を用いて惑星探査を行うための方法論を開拓し,ケプラーデータの解析を通して惑星を検出・確認するとともに,今後ケプラーの第2次ミッションであるK2や将来のTESSミッションに備えることである。2014年度は特に,位相光度変化法を記述する解析式をJackson et al. 2012を元に改良し,MCMCを含むフィッティングコードに組み込んだ。また実際に位相光度変化と思われるフラックス変動が見られたKOI-977, 1894, 2133と呼ばれる星に対してフィッティングコードを適用し,伴星(惑星)の軌道や質量に対して制限を加えた。視線速度測定を含む一連の解析の結果,KOI-1894とKOI-2133は巨星周りの巨大惑星であることがわかった一方で,KOI-977は三重連星系である可能性が高いことがわかった。 2013年度に引き続き2.の近赤外高分散分光を用いた視線速度測定法の開拓も行った。開発中の近赤外高分散分光器IRDは2014年度中の稼働を目指していたが,装置開発の遅れ等あり2015年度内のファーストライト予定となったため解析ソフトの開発についても時間をかけて取り組んだ。2014年度中は特に,近赤外域での地球大気透過スペクトルをモデル計算するコードを取得し,IRDの視線速度解析で地球大気透過スペクトルを除去する際のテンプレートとして解析ソフトに組み込んだ。また波長較正用の人工光源(レーザーコム)の模擬スペクトルを作成し,モンテカルロ計算からレーザーコムによる波長較正の精度の見積りとその必要な精度達成のための条件を導出し,装置開発側にフィードバックを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の研究内容のうち,「低質量星周りの惑星探査のための視線速度解析ソフトの開発」については,装置開発側の遅れ等があり2014年度中に当初予定していたIRDのファーストライトを迎えることができなかったため,それに伴いIRDの試験観測データの解析など解析ソフトの実際の運用はやや遅れ気味である。一方,それによって空いた時間を利用して「位相光度変化によるケプラー惑星候補天体の詳細解析」に着手することができた。後者の研究はもとの研究計画では想定していなかったものであるが,進化した星の周りでの短周期惑星の欠乏や恒星と惑星の潮汐進化は惑星系の起源の統一的理解という本来の研究目的とも密接に関わっており,研究を遂行していく上で自然に出てきたものである。
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今後の研究の推進方策 |
「低質量星周りの惑星探査のための視線速度解析ソフトの開発」については今後はデコンボリューションを含む星のテンプレート取得のルーチンを作成するなどして,より実際の運用に近づける形でパイプラインを整備していく。また最終的にIRDで達成できる現実的な視線速度精度を見積もるため,分光器に取り付けるファイバーのモーダルノイズや天体スペクトルを取り出す際のデコンボリューションによる視線速度への系統誤差を引き続き評価していく。 また初年度から継続している惑星の軌道傾斜角の測定の研究に関しては,2015年5月と8月に早期型星周りの複数惑星系のトランジット惑星に対するロシター効果の測定を予定している。これまでロシター効果の観測により多くの軌道が傾いた系が見つかっているが,その軌道傾斜が天体同士の相互作用に由来しているのか惑星とは無関係に恒星の自転軸が自然に傾いたのか理由がわかっていなかった。早期型星周りの複数惑星系においてロシター効果などにより軌道傾斜を測定することはこの疑問を解決する糸口になると考えられており極めて重要である。
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