研究概要 |
本研究では, 価値観に着目したレビュー分析, およびその結果に基づくユーザモデリングを行い, 作成したユーザモデルを用いた情報推薦システムを構築した. 情報推薦システムにおいて新規のユーザを対象とした場合, モデリングを行うための情報が少なく適切な情報推薦を行えない問題が指摘されている. この問題は情報推薦の分野でcold-start問題として知られており, 新規ユーザに対してどのように適切な推薦を行うかは非常に重要な課題となっている. 本研究では情報推薦における価値観を「どの属性を重視してアイテムの評価を決定するか」を判断する基準と定義し, それが各属性に対する「こだわり」の強さとして表れると考える. 属性は映画であれば監督や俳優のように, アイテムの評価観点となる要素を表す. 提案手法ではレビューから属性に対する評価とアイテムに対する評価の関係を分析していくことで, どの属性がアイテムへの評価に強く影響を与えるかを推論する. 本研究ではWikipediaや4trave1, 価格.comに登録されているアイテムを対象とした. 被験者を通して収集したアイテムに対する評価情報からユーザモデルを作成し, 推薦アイテムの提示を行うことで評価実験を実施した. 実験結果から, 評価情報が少ない(cold-start問題に該当する)環境において, 提案手法は高い精度で推薦を行うことができることが示された. これらの成果を, 2件の学術論文や3件の国際会議などとして発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wikipediaや4Travelなどの実データを対象として, 価値観に基づくユーザモデル作成手法および情報推薦システムを構築した. また, 評価実験を行うことで提案手法の特性や有用性を示した. これらの成果は, 学術論文2件, 国際会議3件などとしてまとめられている, したがって, 本年度の研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
提案手法では, どの属性を重視してアイテムの評価を決定するかという, 属性に対する価値判断をユーザモテルとして作成している. このようなユーザモデルは各ユーザの評価傾向を表すものであることから, その傾向に基づいていくつかのユーザタイプとして類型化することができると考える, これにより, それぞれのタイプでどのようなアイテムが好まれるのか, またどのような推薦手法を用いることが効果的かなど, 情報推薦システムにおける推薦戦略への適用が期待できる. 加えて, ユーザだけでなくアイテムについても同様にモデリングを行う. アイテムモデルが事前に得られていれば, 属性に対する評価情報が得られずとも総合評価のみを用いてユーザの価値観をモデリングできるのではないかと考える.
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