研究課題/領域番号 |
13J03201
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
上野 萌子 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 発達心理学 / 乳児 / 斜面 / 自己受容感覚 / 心拍反応 / 対処行動 |
研究概要 |
本研究は、下り斜面に対する対処行動が発現する基礎的なメカニズムを解明するとともに、臨床場面への応用を目指した研究である。そこで、行動の獲得の基礎となると考えられている斜面提示時における視覚的自己受容感覚について検討を行っている。 平成25年度は、まず生後9ヵ月児34名を対象に、バーチャルムービングルームを用いて、仮想的な下り10°および30°の斜面状の光学的流動に対する反応を検討した。その結果、9ヵ月児は角度に応じた姿勢補償を示すと共に、下り30°の斜面状の光学的流動に対してより心拍数の上昇を示した。急な下り斜面に対して生じる姿勢補償に伴う心拍数の上昇は、適切な対処につながる可能性がある。このように生理的レベルでの分析を行うことにより、斜面に対する対処行動の基礎的なメカニズムの一端が明らかになったと言える。 また、本研究のベースとなる研究として、バーチャルムービングルームにおける実験パラダイムを確立するための研究を発展的に実施した。生後9ヵ月児30名を対象に、ムービングルームとバーチャルムービングルームの両方の装置を用いて、視覚刺激の前後方向の動きに対する姿勢補償を検討した。その結果、両装置において9ヵ月児は視覚刺激の動きの方向に対応した姿勢補償を示し、これらの反応には関連が見られることが明らかになった。すなわち、バーチャルムービングルームは実際に壁が動くムービングルームと同様の視覚的効果があることが示唆された。 これらの研究は、新たな実験パラダイムを確立し、斜面に対する対処行動の発現メカニズムに生理的レベルの視覚的自己受容感覚を取り入れたという点で、重要な意義を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の計画に従って進められ、研究成果は学術雑誌および学会発表において発表されている。また、当初の研究計画に加えて、バーチャルムービングルームを用いた実験パラダイムを確立するためのベ一スとなる研究も実施されており、当初の計画以上に研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的である斜面に対する対処行動の発現メカニズムの解明を達成するために、当初の計画に従い、斜面における適切な対処行動の発現と視覚的自己受容感覚との関連性をさらに検討する予定である。具体的には、乳児に対して実際の斜面およびバーチャルムービングルームを用いた課題の両方を実施し、これらの発達の関連をより実証的に検討していく。そこで現在、次の研究実施に向け、滑り台を製作中である。また、これらの研究を幼児や発達障害児にも発展させて実施することにより、今後さらに十分な研究成果が得られることが期待される。
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