研究課題/領域番号 |
13J03201
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
上野 萌子 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 発達心理学 / 乳児 / 斜面 / 自己受容感覚 / 心拍反応 / 対処行動 |
研究実績の概要 |
本研究は、下り斜面に対する対処行動が発現する基礎的なメカニズムを解明するとともに、臨床場面への応用を目指した研究である。そこで、行動の獲得の基礎となると考えられている斜面提示時における視覚的自己受容感覚について検討を行っている。 平成26年度は、申請時の研究計画に従い、実際の斜面における行動現象的レベルと斜面提示時における視覚的自己受容感覚といった生理的レベルの関連を検討するための研究を開始した。具体的には、角度を変えることができる滑り台を製作することにより、実際の斜面およびバーチャルムービングルームの両方の課題を同一の8ヵ月のハイハイ児に実施し、これらの発達の関連を検討している。 また、視覚的自己受容感覚の発現に対するハイハイによる自己移動経験の影響に関する研究について、さらに追加で実験を実施した。乳児はハイハイを開始することにより、急な下り斜面といった環境に直面した際、周囲の視覚情報を適切に処理し、その情報を利用した姿勢補償や心拍反応が生じ、適切な対処がとれるようになる可能性が明らかになった。この研究から得られた結果を取りまとめ、現在海外誌への論文投稿に向けて準備を進めている。 さらに、バーチャルムービングルームを用いて斜面状の視覚的流れに対する姿勢補償および生理的な心拍反応を角度別に検討した採用第1年度目の研究について、指導教員の共同研究者であるカリフォルニア大学バークレー校キャンポス教授と打ち合わせをし、9ヵ月のハイハイ児のみに焦点を当てて分析を行った。その結果、9ヵ月のハイハイ児は、角度に応じた適切な姿勢補償を示すと共に、30°の下り斜面状の光学的流動に対して特に心拍数の上昇を示すことが明らかになった。この結果を取りまとめ、2014年7月に国際赤ちゃん学会 (ICIS) のシンポジウムにおいて発表を行うと共に、現在学術雑誌に論文投稿を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の計画に従って進められ、研究成果は学術雑誌および学会発表において発表されている。また、その展開となる研究を発展的に実施しているのは、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的である斜面に対する対処行動の発現メカニズムの解明を達成するために、当初の計画に従い、斜面における適切な対処行動の発現と視覚的自己受容感覚との関連性をさらに検討する予定である。具体的には、滑り台を用いた研究を継続して実施すると共に、ハイハイ開始0、2、4、6週目に実際の斜面とバーチャルムービングルームの両方の課題を実施し、これらの発達的変化を縦断的に検討することを計画している。また、これらの研究を幼児や発達障害児にも発展させて実施することにより、今後さらに十分な研究成果が得られることが期待される。
|