前年度に構築した近接場熱ふく射エネルギー輸送量を評価する実験装置を改良し、平行平板同士のふく射エネルギー交換量をギャップ1~100μmの範囲において従来よりも非常に高い精度でエネルギー交換量を定量評価できた。 さらにエミッタ/レシーバとして用いている石英基板上に5μm角の矩形空洞を多数形成した試料を用意し、同様な手法でふく射エネルギー交換量の評価に成功し、微細空洞により近接場ふく射エネルギー交換量が飛躍的に増大することを明らかにした。金矩形空洞同士を持つエミッタ/レシーバ間においてのみ、エネルギー交換量増大現象が見られたことからエミッタ表面に局在している表面プラズモンが、ギャップが極めて小さい時に同じ構造を持つレシーバへ伝播することでエネルギー交換量の増大に寄与していると考えられる。 以上の現象を検証するため、前年度に開発した揺動散逸定理に基づく熱ふく射現象解析コードを用いて金周辺部におけるふく射エネルギー分布(電場分布)を計算し、考察を行った。計算結果から、金空洞内部において非常に強い電場が形成されていることが分かった。これは矩形空洞の共振理論で説明できるように、空洞内部では電場の定在波が存在することに対応する。また、凸部においても近空洞内部で形成される電場とほぼ同じ強度の電場が形成されていることがわかった。一方、空洞の凸部表面から5μmより上方では、空洞周辺部とくらべて電場強度が小さいことがわかる。電場強度のZ方向依存性を確認したところ、凸部表面から5μm以下の範囲では、表面に近づくにつれ指数関数的に電場強度が強くなっていることが分かった。以上の数値計算結果より、金空洞を持つエミッタ周辺部では空洞内部および凸部に強い電場が局在し、ギャップが非常に小さい時局在している電場がレシーバ伝播することでふく射エネルギー交換量の増大に寄与していると考えられる。
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