研究課題/領域番号 |
13J03207
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大谷 哲 千葉大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 殉教者 / 告白者 / 初期キリスト教会 / 迫害 / デキウス帝 / カリスマ的権威 / 贖宥 / 聖餐論 |
研究概要 |
本研究では、初期キリスト教教会記録における、生ける殉教者に関する抑制的叙述が、教会内の制度的権力の頂点たる司教と、迫害に際してイレギュラーに発生する非制度的・カリスマ的権威たる殉教者との政治的闘争を反映していることを明らかにすることを課題の一つとしている。 そのため本年度は可能な限り殉教者文書や教会暦史料などの一時文献、研究文献の収集に努め、またパソコンを購入して電子データ化された史料類に対応する予定であった。また、重要史料に関しては翻訳を行い、研究成果の学会報告、学術雑誌投稿を目指した。 本年度は2013年10月にメルボルン(オーストラリア)のAustralian Catholic Universityで開催された国際初期キリスト教学会The Early Christian Centuries Conference 1 : Men and Women in Early Christianityにて、"An investigation of the penances in the Decian persecution and the internalconflicts in the Church of Carthage"のタイトルで報告を行った。この報告は紀元後三世紀にデキゥス帝によって行われた迫害の際、迫害という状況下でイレギュラーに権威を獲得した殉教者・告白者が、大量発生した棄教者の取り扱いに対して司教と紛争を起こした状況に関して考察を行ったものである。この報告で各国の研究者より受けたアドバイスをもとに、当時の教会内での贖宥儀礼の実際について史料分析・考察を深め、同11月に「デキウス迫害期におけるカルタゴ教会の贖宥権紛争-三世紀のキリスト教会における悔俊の検証を通じて-」のタイトルのもと史学会第111回大会 西洋史部会(東京大学)で研究報告を行った。また、2013年10月にはThe Tenth Japan-Korea-China Symposium on Ancient European History, Capital Normal University in Beijing(首都師範大学 : 中国)に参加してChairをつとめ、各国の西洋古代史研究者と議論し情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定していた史料収集・分析ならびに国内外での学会報告を経て、本研究の妥当性の確認と研究内容上の計画の微修正を行うことができたため、おおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、2014年5月31日には日本西洋史学会大会にてポスター報告を行い、三世紀のキリスト教迫害の実情とそれに際した教会メンバーの行動様式を分析することで、当時の教会内外に対しておこなわれた内政・外交の検証をさらに進める予定である。また、研究成果の公表も随時試みていく。
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