研究課題/領域番号 |
13J03241
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古板 恭子 大阪大学, たんぱく質研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 溶液NMR / 常磁性援和促進 / タンパク質 / 立体構造 / フロリゲン |
研究概要 |
タンパク質の立体構造を決定する手段のひとつに、溶液NMRを用いる方法がある。溶液NMRによるタンパク質の解析には、構造が変化しやすい「やわらかい」領域を含むタンパク質を対象とできる、タンパク質の運動性の情報が得られるといった利点がある。一方で、高分子量タンパク質の解析に向かないという欠点があり、現時点では溶液NMR法により構造決定が可能なのは、分子量3万程度である。 本研究は、分子量10万以上のタンパク質に適用可能な溶液NMRによる立体構造解析法の開発、および開発する方法を用いた分子量約11万の「フロリゲン/受容体/転写因子/DNA」4者複合体の立体構造決定を目指している。 平成25年度には、まず高分子量タンパク質の立体構造解析に適用可能な構造解析法として、常磁性緩和促進(以下PRE)を用いたタンパク質の立体構造解析法の開発を行った。一般に、溶液NMRによるタンパク質の立体構造決定は、核オーバーハウザー効果(nOe)から得られる距離情報に基づいて行われる。しかしながら、高分子量タンパク質の場合、構造決定が可能なだけのnOe距離情報が得られないことが多い。そこで本研究では、nOeに加え、PREから得られる距離情報を用いたタンパク質の立体構造決定を試みた。nOe距離情報による構造決定が困難であったタンパク質、Sinlに対し、計9個のスピンラベルを導入し、PREから計867個の距離情報を取得した。これらPRE距離情報を用いることで、Sin1の高分解能構造を決定することができ、PRE距離情報がタンパク質の高分解能構造を得るために有効であることが示された。 次に、「フロリゲン/受容体/転写因子/DNA」4者複合体の構成要素のうち、分子量約2万のフロリゲン及び分子量約5万の受容体の立体構造解析に取り組んだ。フロリゲンに関しては、低分解能構造を決定することができた。受容体に関しては、サンプル調製の工夫や、NMR測定条件の検討を行い、良好なNMRスペクトルを取得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成25年度に実施予定であった^<13>C観測NMRの高感度化に関しては遅れているものの、かわりに平成26年度に実施予定であった高分子量たんぱく質の立体構造解析に必須である、PREを用いた構造決定法を確立することができた。また、4者複合体の立体構造解析に関しては順調に進展しているため、評価②とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、平成25年度に達成できなかった^<13>C観測NMRの高感度化を行う。また、受容体の立体構造解析を推進するとともに、4者複合体のその他の構成要素の立体構造決定を行う。 平成27年度には、受容体の立体構造解析を完了させ、4者複合体に関して構造情報の収集を行い、4者複合体の立体構造決定を行う。
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