研究題目「近世の地方における歌舞伎文化の展開と地芝居への影響」は、歌舞伎や人形浄瑠璃といった芸能を中心に、近世期、三都(江戸・大坂・京都)以外の地域において、人々が中央の文化を受容することが、地域文化の形成とどのように関わっていたのか、明らかにすることを目的としている。特に、祭礼の奉納芸能として、または人々の娯楽として、様々な地域で演じられてきた地芝居に注目し、静岡県・愛知県・三重県といった、東海地方の事例を中心に研究を進めてきた。 本年度は、2015年11月18日~21日にかけて、皇學館大学佐川記念神道博物館(三重県伊勢市)他を訪問し、史料調査を実施した。また、①歴史学研究会日本近世史部会10月例会報告「近世の町方における祭礼と芸能―三河国刈谷城下を事例として―」(2015年10月29日、於東京大学本郷キャンパス福武ホール大会議室)、②第82回民衆思想研究会報告「近世中後期の祭礼と地域社会」(2015年12月12日、於早稲田大学早稲田キャンパス22号館201教室)の2度の研究発表を行った。 ①については、『刈谷町庄屋留帳』1~20巻(1976~1989年)をもとに、近世の三河国刈谷城下(現愛知県刈谷市)における芸能の受容について考察した。『刈谷町庄屋留帳』に収録された、18~19世紀における、歌舞伎や浄瑠璃・講釈といった芸能の興行願や、祭礼関係記事を分析し、近世後期の一城下町における芸能受容の状況を明らかにした。②については、三河国加茂郡足助村(現愛知県豊田市)における足助八幡宮祭礼(毎年8月に開催)を事例に、地域社会の変容と祭礼や地芝居の運営の関わりについて考察した。 そのほか、「地芝居にみる三河地域」(地方史研究協議会大会問題提起文、『地方史研究』65-5、2015年10月)を執筆し、西三河地域の地芝居の事例を中心に、地芝居の担い手に見られる特徴について述べた。
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