研究課題/領域番号 |
13J03270
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉野 隆一 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クローナル干渉 / 相同組換え / シミュレーションモデル |
研究実績の概要 |
生物の進化は種内に存在する遺伝的変異の集団内での拡散によって起こる。遺伝的変異は進化的に有利なもの、不利なもの、中立なものに分けられる。有利な変異は割合ではとても小さいものの、ある程度の頻度まで増えると正の自然選択により短期間で集団中に固定する。不利なものは負の自然選択によって集団中から取り除かれる。しかし、新規突然変異のほとんどは不利な変異なのでその影響は無視できない。中立な変異は固定または消失までの待ち時間が長いため、現在観察される変異のほとんどは中立なものだと考えられる。
本年の研究では研究対象としてバクテリアを用いた。バクテリアではゲノムサイズが小さいため全ゲノムをシミュレートすることができる。自然選択の強さと有利な突然変異率、集団サイズと組換え率をパラメーターとして、それぞれのパラメーターがお互いにどのように影響し合うのかをシミュレートした。評価には固定した突然変異の数で行った。またバクテリアの組換えのメカニズムは遺伝子変換を用いた。組換えがないときに有利な突然変異が頻繁に集団中に生じたときに有利な変異の固定確率が下がることが知られている。では、バクテリアの現実的なパラメーターではそれはどうなるのか?突然変異率(U)が低いとき、クローナル干渉の影響はほとんどないが、突然変異率が十分に大きなとき、組換え率によらずクローナル干渉の影響を受けた。そして、その中間では組換え率が大きな方が固定率は高かった。次に集団サイズの影響を考えた。集団サイズが小さいときはクローナル干渉の影響は小さく、集団サイズが大きなときは影響が大きかった。これは、どれだけの数の突然変異が集団中に同時に存在できるかが影響していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有利な突然変異は、集団サイズの大きな単細胞生物では頻繁に起こっていると考えられている。本年の研究ではその状況下における進化を明らかにすることができた。本研究では、組換え率をパラメータとして加えることで、既存の理論研究よりもより現実に近い状況を調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、有利な突然変異のゲノムワイドな影響を調べるため自然選択の強さと突然変異率を調べることを目的としている。これまでの研究で有利な突然変異が頻繁に起こる状況で進化がどのように起こるのかを明らかにすることができた。しかし、実際の生物集団では中立な変異や有害な変異も起こっていることが知られている。そこでパラメーターとしてそれらの突然変異を組み込み、その進化を調べたい。
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