研究課題
マイクロアレイデータ、過去の文献から解析対象の遺伝子を絞り込んだ。その結果、リン投与により発現量が増加する遺伝子は75あり、そのうちリン欠乏時に発原料が低下する遺伝子は35であった。“リン投与時”、“リン欠乏時”ともに変動する35遺伝子は体内外のリン存在量の感知において重要ではないかと考えたことからこのグループに分類された遺伝子に注目した。遺伝子のアノテーションから解析対象とした9つの遺伝子発現の詳細をqPCRによって確認した。高リンおよび低リン培地で栽培した植物体について上記の遺伝子の発現を調べたところ、BT1、BT2、BT5、SDI WRKY22についてリン条件により5-10倍の遺伝子発現量の違いが見られた。また、これらの遺伝子発現制御機構とPHR1/PHL1(リン欠乏応答機構の重要な転写因子)との関係を調べるため、低リン条件下でのphr1/phl1変異体株でも発現解析を行った。その結果、BT1、BT2、BT5遺伝子は、PHR1/PHL1の制御下にあるとこが示唆された。遺伝子発現量は、野生型株よりも変異体株の方が高かったことからBT遺伝子の発現量は、低リン条件下においてPHR1/PHL1によるネガティブな制御により抑えられているものと考えられた(高リン条件下では、 PHR1/PHL1は上流因子により制御され機能しないためBT遺伝子の発現量が上昇する)。さらに、bt変異体株の表現型観察では、寒天培地における根の観察では、bt変異体株の側根は野生型株よりも伸長は早く、また頻度も増加するような傾向が見られた(精査中)。P-33取り込み実験から、リンの地上部への移行は、変異体株の方が野生型株よりも高い傾向にあることが示された。前年度の実験結果によるとBT2遺伝子の発現は維管束周辺に見られたことからも根と地上部間の輸送に関する何らかの機能を持つことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
シロイヌナズナ根のリン輸送イメージングについては、これまでの成果を論文化しアクセプトを得ることができた。また、リン応答遺伝子のうち解析対象としているBT遺伝子について、既知のリン応答転写因子の下流にありネガティブな制御を受けている事を示し、さらに遺伝子欠損株にリン輸送の表現型が見られるなどのデータが得られたため。
bt変異体株で観察されている表現形を確認するため、BT遺伝子のコンプリメントラインを作出中である。コンプリメントラインが作出できた場合は根の表現型およびリンの吸収と分配実験を行う予定である。また、BT5遺伝子について発現の局在を確認するための形質転換体を作出していなかったため、推測されるプロモーター領域の後ろにGFPもしくはGUSを導入した形質転換体を作出し解析予定である。
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eLife
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Plant Cell Physiology
New Phytologist
巻: 209 ページ: 161-76
10.1111/nph.13591