研究課題/領域番号 |
13J03294
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡本 あゆみ 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 高圧型変成岩 / 神居古潭帯 / 角閃石 / 圧力溶解 / 速度弱化 / 海溝型地震 / 間隙水圧比 |
研究実績の概要 |
本研究は過去の沈み込み帯で形成された高圧型変成岩の観察および岩石変形実験から,沈み込み帯の動力学を明らかにすることを目的としている.本年度は昨年度の結果を踏まえ,天然試料中で圧力溶解-沈殿によって変形・成長していると示唆されたアクチノ閃石(角閃石の一種)と緑泥石を用いて回転せん断実験を行った.なお,本年度の実験は6月より現在までオランダ・ユトレヒト大学に滞在し,C.J. Spiers 教授の指導の下に行った.結果として予想されていた通り,200℃-300℃程度の温度で圧力溶解が顕著に起こっていることが明らかとなった.さらにせん断速度を段階的に変化させた実験から,実験試料は低有効垂直応力および低間隙水圧,低速度の場合に300℃および400℃で速度弱化を示すことが明らかとなった.温度を300℃に固定し有効垂直応力と間隙水圧を変化させた実験も行っており,これらの結果から速度・状態依存摩擦構成則パラメータの(a-b)の値と有効垂直応力および間隙水圧の関係式を求めた.その結果,実験試料は約800 MPa(約30 km)の深部でも高い間隙水圧(間隙水圧比 > 0.98)の場合に速度弱化を示し,震源となる可能性が示唆された(国際誌投稿予定).この結果は数値計算等によって推定されている震源域での高い間隙水圧比と矛盾しない.なお,実験後の試料は走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置を用いた組織観察も行っている.また5月には韓国・基礎科学研究所において二次イオン質量分析計(SHRIMP)を用いてU-Pb年代測定を行った.試料は神居古潭帯の上昇時に緑色片岩相の後退変成作用を強く受けたと推察されるユニット(パンケホロナイユニット)の泥質-苦鉄質岩互層から抽出した砕屑性ジルコンである.粒子数が少なく追加実験を必要とするが,神居古潭帯の変成岩類の変成史に関して重要なデータを得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた天然の岩石を用いた変形実験は計画通りに行われ,実験結果からも角閃石(アクチノ閃石)の圧力溶解-沈殿が200℃-300℃程度の温度条件で顕著に起こっていることが明らかとなった.さらにせん断速度を変化させた実験から実験試料が震源となるためには高間隙水圧が必要であるという結果を得ることもできた.鉱物組み合わせを変化させた変形実験については実施することができなかったが,目的である角閃石の圧力溶解に関しては先述の通りデータを得ることができているため,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度の実験で得られた変形実験後の試料と天然の試料を詳細に観察・比較し,相違点やその理由について考察する予定である.さらに圧力溶解-沈殿に関する実験結果を整理・解析し,構成方程式の確立を目指す.最終的に本研究で得られた成果をまとめ発表するために論文執筆を予定している.
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