研究課題
アデノウイルス(AdV)は51の血清型に分類されるDNAウイルスであり、造血幹細胞移植後などの高度な免疫不全状態では、致死的な感染症となることがある。AdVに対して十分な有効性を有する抗ウイルス剤は現在のところないため、AdV抗原特異的T細胞を用いた細胞療法の研究が行われている。欧米ではAdV血清型5に特異的なT細胞を用いた細胞療法が試みられ、その有効性が報告されている。一方、本邦における移植後のAdV感染症としては、AdV血清型11によるものの報告が多いため、本研究ではAdV血清型11感染症に対する細胞療法を実現することを目的とした。その第一歩として、日本人に最も多いHLAである、HIA-A^*24:02に拘束されるAdV抗原特異的T細胞が認識するエピトープを同定することを目的とした。まず、AdV血清型11のhexon蛋白からできうる、nonamer peptideの内、HLA-A24 (A*24:02)に結合するペプチドを、BIMAS解析ソフトウエアおよびMHC stabilization assayにより10種類選択した。次に、HLA-A*24:02を有する健常人より分離した末梢血単核球をこれらの10種類のペプチドで刺激したところ、3種類のペプチドに対して特異的なCD8^+T細胞が誘導された。その内、TYFNLGNKF (TYF)ペプチドに対して特異的なT細胞のみがAdV血清型11を感染させた、HLA-A*24:02を有する細胞に対してIFN-Yを産生した。また、TYF特異的CD8^+T細胞は、TYFペプチドを添加したHLA-A*24:02を有する細胞に対して細胞傷害活性を示したが、同ペプチドを添加したHLA-A*24:02を有しない細胞に対しては細胞傷害活性を示さなかった。以上より、TYFペプチドがHLA-A*24:02拘束性AdV血清型11抗原特異的T細胞のエピトープであることが明らかになった。さらに、HLA-A*24:02を有するAdV血清型11感染症患者において、末梢血中にTYF特異的CD8"T細胞が出現するとともに、AdV感染症が軽快した。従って、TYF特異的CD8^+T細胞はin vivoにおいてAdV血清型11を排除でき、AdV血清型11感症にしてTYF的CD8^+T細胞を用いた細胞が用である可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
第一の目標である、アデノウイルス抗原特異的T細胞のエピトープを同定することに成功した。
HLA-A^*24:02拘束性のアデノウイルス抗原特異的T細胞のエピトープを同定することに成功した。しかし、その末梢血中の頻度が極めて低いことが明らかになったため、HLA-A^*24:02を有する健常人の末梢血単核球より、アデノウイルス血清型11抗原特異的T細胞をstreptamerを用いて分離し、直接患者に輸注する細胞療法を行うことは困難であることが明らかになった。そこで、現在は、アデノウイルス抗原特異的T細胞を体外で効率よく増やすことを目的とした研究を行っている。
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Molecular Immunolgy
巻: 56 ページ: 399-405
10.1016/j.molimm.2013.05.232