研究概要 |
抵抗変化メモリは, 高速応答, 低消費電力, 高集積化が可能なため, 次世代不揮発性メモリとして期待されている. その動作原理は酸化物中のフィラメントと呼ばれる導電性のパスの形成と断裂によって説明される. 我々はニッケルを電極に用いた抵抗変化メモリにおいて, 磁気抵抗と直接観察の二つの方法を用いてナノスケールの強磁性フィラメントの形成を確認した. この成果は, 今までメモリ素子だけとして考えられてきた抵抗変化メモリが, 磁気センサーなどのスピントロニクス素子としても応用できることを意味し"beyond-CMOS"テクノロジーのひとつになることが期待できる. 本研究成果は, フォトリソグラフィーなどの半導体微細加工技術を用いて作製した四端子クロスバー構造素子による迅速な最適条件の導出によって成し得たと言える. 強磁性フィラメントの観察においては, そのフィラメントの形成箇所の特定とTEM観察に成功した. これは, 強磁性フィラメントの形成過程のメカニズム解明に向けた大きな成果と言える. 研究代表者はこれらの成果を応用物理学会や国際電気化学学会で発表し, 論文を投稿中である. また, 物質材料研究機構との共同研究においては, 脳型記憶を模倣した原子スイッチを研究した. こちらは, その動作が抵抗変化メモリに似ていることから, これらを研究することで双方の導電パスの理解に役立つことが期待できる. これまで, ポーラスアルミナをテンプレートとした縦型原子を試作し, 動作を実証した. これは原子スイッチや抵抗変化メモリの微細化が可能となる重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
強磁性フィラメントに由来した磁気抵抗はスピントロニクスの新たな発展を予感させるが, 信号比が小さく, 実用性が高いとは言えない. フィラメントを極限まで小さくすることで信号比を大きくできることが報告されているので, 今後は, フィラメントの直接観察により, 形成過程を調べ, パルス駆動方式を用いることでフィラメントの形状を変える. これらの装置は研究代表者が所属する研究室で既に保有している. この推進方策は強磁性フィラメントのメカニズム解明をさらに押し進めることと言える.
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