電極に強磁性体を用いた“Ni/TiO2/Pt”と“Ni/HfO2/Pt”という2種類の抵抗変化メモリを作製し、磁気抵抗効果、透過型電子顕微鏡を使った断面観察、抵抗の温度依存性による評価から導通フィラメントの構造解明を試みた。 Ni/TiO2/Pt構造においては、ユニポーラー型のスイッチングが観測され、低抵抗状態では異方性磁気抵抗効果が観測された。この結果はフィラメントが強磁性体で形成されていることを示唆する。スイッチング後の素子の断面観察からは、TiO2層の内部にニッケルが拡散していることが明らかとなった。また、低抵抗状態の抵抗の温度依存性は金属的性質を示した。これらの結果は拡散したニッケルが金属強磁性体フィラメントを形成していることを強く示唆する結果である。 Ni/HfO2/Pt構造においては、TiO2素子の場合とは異なりバイポーラー型のスイッチングが観測された。SET動作のときに設定する電流コンプライアンスの条件によって、酸素欠損フィラメントと強磁性ニッケルフィラメントという組成の異なる電流パスが形成されることが、異方性磁気抵抗効果から明らかとなった。また、それら2種類の導通フィラメントは異なる温度特性を示すことも明らかとなった。この結果は、電流コンプライアンスによってフィラメントの組成を制御できるデバイスの作製に繋がるものである。 本研究では、強磁性体を電極として使った抵抗変化メモリが、磁気抵抗効果を有することを明らかにした。これらの成果は、電気的に制御する抵抗変化メモリに磁気的性質を加えることが可能であることを示すものである。
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