研究概要 |
本研究課題では、暗黒物質を未知の素粒子と仮定し、その正体の解明を目標とする。暗黒物質の性質を探る手段の1つとして間接検出実験が挙げられる。これは、銀河中心や銀河天体内で暗黒物質が対消滅・崩壊した際に放出するシグナルを探索・解析し、暗黒物質が持つ相互作用や暗黒物質の質量を検証していくものである。昨年度、銀河中心方向から放出される高エネルギーガンマ線のフラックスに、理論予測に対して、未知の超過が報告された。この超過を暗黒物質の崩壊や対消滅のシグナルとして説明しようという試みが数多くなされた。しかし、提唱された多くの模型では、暗黒物質がガンマ線以上に荷電粒子を生成してしまい、荷電粒子観測の制限に反するという問題を抱える。つまり、荷電粒子の生成を抑えつつ、高エネルギーガンマ線をもたらす暗黒物質が必要とされていた。 こうした背景に基づき、我々は、アクシオン(ここで言うアクシオンはaxion-like particleと呼ばれる類似粒子を含む)と強く相互作用する暗黒物質が、荷電粒子観測と無矛盾に、報告されたガンマ線の超過を説明できることを示した[1]。我々の提示したシナリオでは、暗黒物質がまず高エネルギーのアクシオンへ対消滅(または崩壊)し、そのアクシオンがアクシオン-フォトン転換(プリマコフ効果)を通じて高エネルギーガンマ線を生成する。このシナリオでは、暗黒物質とフォトンの相互作用を直接持たせないことで、問題の原因となる荷電粒子の生成を自動的に抑えることができる。研究[1]では、ガンマ線の超過の再現を要求することで、アクシオンと電磁場の相互作用の強さだけでなく、暗黒物質の質量、アクシオンへの対消滅率(または、アクシオンへの崩壊率)へ予言を与えることができた。ガンマ線超過がより強く追認された際には、研究[2]による暗黒物質の性質予言は大きな意義を持つものとなる。 [1] M. Yamanaka, K. Kohri, K. Ioka and M. M. Nojiri, ''130GeV ga㎜a-ray line through axion conversion, '' arXiv : 1310.3474 [astro-ph. CO].
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