研究課題
音楽演奏のコミュニケーション過程を対象とする従来の研究では、演奏者から鑑賞者への一方通行の伝達過程が扱われてきた。本研究課題では、ヒト対ヒトの感性情報コミュニケーションの基礎的資料とすべく、演奏者と鑑賞者がともに会する「生演奏場面」に注目し、演奏者に対しては「一人で演奏するとき」と「鑑賞者を前にして演奏するとき」、鑑賞者に対しては「演奏の録音をスピーカーから聴取するとき」と「演奏者を前にして聴取するとき」の比較を通して、音楽演奏における演奏者と鑑賞者のインタラクティブなコミュニケーションを解明することを目指した。主な成果は下記の通りである。演奏者の身体の動きをモーションキャプチャによって測定した。演奏者の身体動作の主成分分析の結果、演奏者の身体の動きは右手首を除く演奏者とヴァイオリンの動き(第一主成分)および右手首とヴァイオリンの弓の動き(第二主成分)の二主成分に集約されることが示された。また、鑑賞者の前で演奏すると全身の身体動作は大きくゆらぎが小さくなるが、弓の動きは平均値、ゆらぎともに大きくなった。さらに、鑑賞者の有無の効果は特に序盤および終盤に認められ、いずれも鑑賞者がいる場合に身体の動きが大きくなり動きのゆらぎが小さくなった。生演奏と演奏音のみを聴取する状況で鑑賞者の聴取体験がどのように異なるのかを調べた。演奏鑑賞中の時々刻々の印象と演奏に対する全体的な評価を評定してもらった。その結果、生演奏条件では録音条件よりも全体的に良い評価がなされること、演奏者の楽曲に対する感情的解釈は生演奏条件の方がよく伝わること、その一方で時々刻々の印象は生演奏条件の方が比較的抑えられたものになることが示された。このことは、演奏中に経験される時々刻々の印象の変化と、演奏後の評価は必ずしも対応するものではないことを示唆する。本成果は日本音楽知覚認知学会研究選奨を受賞した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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