研究概要 |
今年度に実施した研究の具体的内容 交付申請書「研究実施計画」で予定していた研究2(交付申請書「研究の目的」の目的1-2.に該当する)と, 来年度に計画していた研究3(交付申請書「研究の目的」の目的2.に該当する)を一部内容の改善をして実施した。 研究2の具体的内容 絵への命名行為と描画技術の関連を明らかにするため, H県下の13名を対象に, 2歳から3歳までの1年間の縦断的な調査を行った。参加児が2歳, 2歳半, 3歳の時点に, 調査員が家庭へ訪問する, または公的施設に集合して個別調査を行った。参加児は自由描画, 描画技術課題(新版K式発達検査模写課題)と描画命名課題を行った。 研究3の具体的内容 ミスコミュニケーションでの命名行為・描画行為と他者の心的状態の理解との関連を明らかにするため, H県下の保育園の年少児から年長児と, 学童に通う小学1年生の合計98名を対象として調査を行った。調査は保育園, または学童の一室を借りて個別調査である。ミスコミュニケーションが想定される描画としてカード注文課題(Eskritt & Olson, 2012の変更版)と, 心的状態の理解として信念理解課題(スマーティー課題, 位置変化課題)を行った。 意義, 重要性 研究2より, 3歳児時点になると, 事前の描画意図通りの命名を行うようになることが改めて示された。この研究には, 複数名の個人を縦断的に調査することによって, これまで実証的な検討が行われてこなかった2歳時点から3歳時点への命名変化の詳細を明らかにした意義がある。また, 命名行為に対して描画技術の影響が仮説よりも限定的であったことは, 描画技術が命名の発生を促すという一方向の関係ではなく, 命名という意味づけによって描画行為が調整されるという新たな仮説を提案する結果として考察された。 研究3からは, 年長児ごろから状況(相手)によって, 子どもが自発的に表現方法を変化させることが明らかとなった。これらの変化と信念理解との関連は有意傾向でしか示されなかったが, 体系的な指導を受ける前から, 子
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
協力してくださる施設(保育園, 学童)のご都合上, 調査内容が実施計画の順序とは前後したが, 交付申請書「研究の目的」に明記した2つの調査が終了した。この調査結果のフィードバック, 学会発表も終えており, おおむね実施計画の通りの進行状況ある。
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今後の研究の推進方策 |
研究3のフィールドが先に確保できたことから, 今年度の実施を計画していた研究1は来年度に課題内容を一部変更して実施する。実施するフィールドには承諾をいただいており, 今後詳細を詰める段階である。具体的な変更箇所と対応策は以下に示す通りである。研究1について, 交付申請書では命名変化と絵の意味理解課題(ApPrely, et al, 2004)との関連を検討することとしていた。しかし, 今年度の研究2を通して, この課題のみでは命名の変化が捉えられないことが予測される。そこで, 絵を含む幼児期早期の表象の発達, そして他者(特に養育者)との描画を介したコミュニケーションについても検討を行うことにより, 絵への命名行為の変化を明らかにする。
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