私の研究課題は、素粒子の物理を記述する模型の中で、特に超対称性を持つようなものの現象論的側面を探ることです。大型加速器であるLHC実験が本格稼働している現在、そのような超対称性理論から予言される新粒子が発見されることが期待されています。2014年4月現在そのような新粒子の兆候はあらわれていませんが、一昨年、電弱対称性を自発的に破る機構の一つであるヒッグス機構から予言される、ヒッグス粒子が存在することがATLAS実験、CMS実験により明らかとなりました。超対称性を持つ理論にもヒッグス粒子は登場し、その質量の大きさを計算することが可能となるのでその値が持つ意味は非常に大きいものとなります。LHCで発見されたヒッグス粒子の質量の値を実現する有力なシナリオのひとつは、超対称性粒子のうちクォークの超対称性パートナーであるスクォークが100TeVから1000TeVという非常に大きな質量を持つというものです。この場合、スクォークをLHC実験で発見できる可能性は消えてしまいますが、ゲージーノと呼ばれるゲージボソンの超対称性パートナーが発見される可能性は十分にあります。私は、共同研究者とともに、ゲージーノの崩壊分岐比から間接的にスクォークの性質を引き出すことができるかどうかを研究しました。特にスクォークが大きな質量を持つため、スクォークがフレーバー対称性を大きく破っている可能性があります。そのようなゲージーノのフレーバー対称性を破るような崩壊パターンと低エネルギー実験におけるフレーバー対称性の破れの制限との関係を調べ、フレーバー対称性を破るゲージーノの崩壊モードの分岐比が数十%に達するような非常に大きなものになりうることを示しました。このようなフレーバー対称性を破る崩壊モードが測定されたならばスクォークのフレーバー構造を調べる足がかりとすることができるので、本研究の成果は意義深いものと言えます。
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