研究課題/領域番号 |
13J03381
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
首藤 高徳 九州大学, システム情報科学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | フレキシブルエレクトロニクス / バンプ / 超音波接合 / 常温実装 / LSI実装 / マイクロバンプ |
研究概要 |
プラスチックフィルム上ヘシリコンLSIを集積し、フレキシブルエレクトロニクスに無線通信やワイヤレス給電を実現させることを目的として研究をおこなった。フレキシブルエレクトロニクス用の基板材料として有望なプラスチックフィルムは150℃程度のガラス転移点を持つため、プロセス温度は150℃以下でなければならない。本研究は先鋭バンプの超音波接合によって、常温でプラスチックフィルム上の配線とシリコンチップ上の電極との接続を実現することを目指した。 超音波接合の接合メカニズムを明らかにするため、接合断面解析と高速度カメラによる接合挙動のその場観察をおこなった。断面TEM解析をおこなった結果、接合界面付近で金結晶の微結晶化が観察された。超音波接合時に接合界面付近で大きな応力が発生して、先鋭バンプが塑性変形したことによって生じたものだと推測する。金結晶が破壊され微結晶となることによって、汚染物質が界面から除去されるために、常温でも接合が生じたと考えられる。次に高速度カメラを用いて接合挙動のその場観察をおこなった。先鋭バンプの対向チップをガラスとして、ガラスに直接押し付けながら超音波印加したときと、金バンプに超音波接合したときの観察を行った。金バンプに対して先鋭バンプを超音波接合したときの方が、ガラスに直接押し付けたときよりバンプの振動幅が小さくなっていることがわかった。金バンプに対しては接合が生じており、しかも接合は比較的初期に発生していることを示唆している。また、超音波接合中の上下のチップ間の隙間の観察をおこなったところ、50msecで約1ミクロンの隙間の減少が観察された。数十ミリ秒オーダーで超音波によるバンプの変形効果が現れることが示唆される。 PENフィルム上の配線に対して、先鋭バンプの超音波接合によってSiチップを実装して接合の電気特性を評価した。その結果、常温で10,000個近くのバンプ接続を実現できていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先鋭バンプの超音波接合のメカニズムについて、断面TEM観察と高速度カメラによるその場観察によって調査し、新たな知見を得ることができたため。また、この技術を用いてプラスチックフィルム上にシリコンチップを常温で実装することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
先鋭バンプの超音波接合において、電気的にオープンとなるような欠陥が発生しており、その原因について高速度カメラを用いたその場観察によって調査をおこなう。また、プラスチックフィルム上の配線とシリコン上の配線を組み合わせた高周波伝送路を構成する試験チップを作製し、信号伝達特性を測定する。 研究成果のさらなる発展を目指し、シリコンCMOS回路上に有機強誘電体や有機フォトダイオードなどの有機機能層を搭載した新しいデバイスの実現可能性を調査する。
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