プラスチックフィルム上へシリコンLSIを集積し、フレキシブルエレクトロニクスに無線通信や無線給電を実現させることを目的として研究をおこなった。フレキシブルエレクトロニクス用の基板材料として有望なプラスチックフィルムは150℃程度のガラス転移点を持つため、プロセス温度は150℃以下でなければならない。第1年度は先鋭バンプの超音波接合によって、常温でプラスチックフィルム上の配線とシリコンチップ上の電極との接続を実現した。第2年度は常温接合のメカニズム解明と、高周波信号伝達特性の評価をおこなった。 接合メカニズムを調査するため、高速度カメラを用いて接合中のバンプとその変形の様子を直接観察した。その結果、超音波の印加により、常温でもバンプの変形が促進することがわかった。つまり、超音波によりバンプが実効的に柔軟化すると言える。超音波を印加して直ちに変形は生じ、50 msでバンプの変形はほぼ完了したが、その後の超音波印加時間の増加で、接合強度は増加した。超音波を印加して50 ms程度でバンプの巨視的な変形は完了するが、その後も超音波の印加により、接合界面付近では結晶レベルで微視的な変形が進行し、接合面積が増加すると考えられる。その結果、常温でも原子レベルでの接合を実現できる。 フレキシブルデバイスをより使い易いものとするには、無線通信や無線給電の実現が必要である。そのため、実装したLSIチップとフィルム上の素子、あるいは、LSIチップ間を高周波伝送路で繋ぐ必要がある。そこで、接点の高周波信号伝達特性の評価をおこなった。40 GHzまでの高周波特性を測定した結果、接合点における伝送損失は無視できる程度に小さいことがわかった。 以上の結果より、低軟化点のプラスチックフィルム上にもLSIを搭載して集積デバイスを作製可能になったと結論する。
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