研究課題/領域番号 |
13J03397
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
髙須 悠介 一橋大学, 大学院商学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 利益平準化 / 株主資本コスト / 銀行借入金利 / 情報の非対称性 / アナリスト・カバレッジ / 会計発生高 |
研究概要 |
平成25年度は会計発生高の利益平準化効果と①株主資本コストの関係、②銀行借入金利との関係に関する研究を進めてきた。他にも社債スプレッドに注目した分析を平成25年度に行う予定であったが、研究が順調に推移し、平成24年度中に査読付論文に掲載されたため、平成25年度は上記の株主資本コストと銀行借入金利に焦点を絞り、研究を行った。先行研究の多くは、資金提供者の情報集合が投資対象企業に関わらず一定であるという仮定を暗黙の前提に置いており、資金提供者の情報集合が投資対象企業によって変化する可能性を考慮していない。しかしながら、会計発生高の利益平準化効果のもたらす情報が資本コストに影響を及ぼすか否かは、経営者と資金提供者の間の情報の非対称性によって強く影響を受ける可能性がある。この観点から、利益平準化と資本コストの関係性に情報の非対称性が影響を与えるとする仮説を構築し、分析を行った。その結果、①日本の事業会社について、利益平準化と株主資本コストの関係性はアナリスト・カバレッジの影響を受けており、アナリスト・カバレッジが情報の非対称性を代理しているとするのであれば、情報の非対称性が高い企業の利益平準化が株主資本コストの低下効果を有している可能性、②銀行とのリレーションが強い企業に関しては、利益平準化と銀行借入金利の間に関係が見られず、これはリレーションが強い場合には銀行が会計情報に依らず私的に情報生産しているために、利益平準化行動が追加的な情報をもたらさなかった可能性、の2つが分析から示唆された。 上述の銀行借入金利に関する研究はヨーロッパ会計学会およびアメリカ会計学会において報告を行い、現在改訂中である。株主資本コストに関する研究は一橋商学論叢にて公刊済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
株主資本コストと銀行借入金利に関する2つの研究は既に分析を終え、1本は公刊済、もう1本は改訂中であり、概ね順調に研究計画は推移している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を概ね達成できており、今後はそれを発展させていく。これまでの研究で会計発生高を総額として捉えてきたが、今後の研究では銀行の主たる会計発生高である貸倒引当金に焦点を絞り、銀行の貸倒引当金計上行動や貸倒引当金に対する市場評価といった論点について研究を進めていく。これにより、これまで会計発生高の総額であるためにブラックボックスとなっていた実際の会計行動を具体的に描写でき、本研究課題を一層進めることができる。
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