研究概要 |
神経浸潤は膵癌の90%以上に認めるという報告もある膵癌に特徴的な浸潤様式であり、(Pancreas, 2003, Pour)、神経における微小環境が放出しているサイトカインや成長因子が癌細胞の増殖を促進しているという相互作用が示唆されている(Biochim Biophys Acta, 2012, Liu)。神経浸潤に関わる因子の検索はこれまでもなされているが、画期的な因子の同定には至っていない。SemaphorinはAxon誘導や神経細胞の接着に関わる蛋白で哺乳類ではSema3-Sema7の5つのClassに分類されており、Sema3は分泌蛋白・それ以外は膜に局在する蛋白と報告されている(Pasterkamp RJ. Nat Rev Neurosci. 2012)。PlexinはSemaphorinの受容体で膜に局在し、Rhoファミリーを介して血管新生や腫癌進展に関わる(Zhou H, et al. Angiogenesis. 2012)。我々はSemaphorin4D (Sema4D)とPlexinB1 (PLXB1)に注目した。Semaphorin4DはCD100とも呼ばれ、リンパ球表面に発現する表面抗原で、CD72を介して免疫制御に関与する(Ishidal et al. Intimmunol 2003)。Sema4D/PLXB1の結合によってErbB2やMetがTransactiveteされることによって血管新生や腫瘍進展に関与する(Swiercz JM et al. J Biol Chem 2008)。Sema4D/PLXB1はRhoAを介して膵癌の遊走を促進すると報告されており(Kato S et al, Cancer Sci 2011)、PLXB1及びSema4Dは頭頸部扁平上皮癌、唾液腺癌及び前立腺癌などの癌及び神経細胞に発現を麗めRhoAを介して神経浸潤に関与するとの報告もある(Binmadi N et al. Am J Pathol, 2012)。当施設における神経浸潤が著明な膵癌症例(神経叢浸潤陽性例[PL+])と神経浸潤の少ない症例をそれぞれ約30例抽出した。現在陽性コントロールと陰性コントロールを用いて免疫化学組織染色の条件設定中である。
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