研究課題
「テーマ①:EGCGセンシングの分子基盤の確立」現在、メラノーマの代表的な治療薬(BRAF阻害剤)に対する薬剤抵抗性が問題となっている。一方で、緑茶カテキンエピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)はがん細胞で高発現する細胞膜上受容体67 kDaラミニンレセプター(67LR)を介してがん特異的な抗がん作用を発揮することから注目されている。特に、EGCGは、BRAF阻害剤感受性およびBRAF阻害剤抵抗性のどちらのメラノーマ細胞に対しても同程度の増殖抑制作用を発揮することから、BRAF阻害剤とは異なる作用機構を有していると考えられた。網羅的遺伝子スクリーニング法を用い、EGCGのメラノーマ細胞増殖抑制作用を仲介する遺伝子を探索した結果、Protein phosphatase 2a alpha (PP2A)という酵素が、EGCGのメラノーマ細胞増殖抑制作用の中心的役割を担っていることを明らかにした。また、EGCGは67LRを介してAdenylate Cyclase/cAMP経路でPP2Aを活性化し、CPI-17/Merlin経路を活性化することでメラノーマ細胞特異的な増殖抑制作用を発現することを明らかにした。さらに、EGCGをBRAF阻害剤と併用することで、BRAF阻害剤の抗メラノーマ作用が顕著に改善することを確認した。以上より、67LR/PP2A経路の活性化は、既存メラノーマ治療薬の抵抗性を改善する新たな治療戦略として期待できると考えられる。「テーマ②:EGCGセンシングの生体内イメージング」EGCGが細胞膜タンパクである67LRを介して強い生理活性を示すが、EGCGと67LRが結合する際に何が起きているかに関して全く不明である。そこで、本研究はEGCGの機能発現につながるイメージング手法を成功に樹立した。その詳細をまとめた論文は近日中に報告する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
まず、「テーマ①:EGCGセンシングの分子基盤の確立」に関しまして、EGCGががん細胞で高発現する細胞膜上受容体67LR)を介しAdenylate Cyclase/ cAMP経路でメラノーマ特異的にPP2Aを活性化し細胞増殖抑制作用を発揮するメカニズムを解明した。この新しい作用機構は、メラノーマ治療の既存抗がん剤が効かない細胞においても効果を示すことから、全く新しい観点からメラノーマ治療の新規ターゲットを提示した。本研究成果はJ Biol Chem. 2014, 289(47):32671-81.にて掲載している。また、「テーマ②:EGCGセンシングの生体内イメージング」では、EGCGの機能発現につながるイメージング手法を成功に樹立した。その詳細をまとめた論文は近日中に報告する予定である。よって、期待以上の研究の進展があったといえる。
テーマ①:EGCGセンシングの分子基盤の確立に関しまして、上記の研究成果を検討していく途中で新たながん幹細胞の維持に重要な因子を同定した。近年、がん幹細胞と呼ばれる少数の細胞集団が抗がん剤治療や放射療法など従来のがん治療に抵抗性を示し、また、がんの再発および転移の原因となっている。そのため、がん幹細胞を標的とする新規がん治療法の開発が急務となっている。転移性メラノーマの生存率が非常に低いことから、メラノーマの根治的治療には、がん幹細胞に対する治療戦略の確立が必要である。一方、上記検討の過程において、EGCGはメラノーマ既存治療薬の抵抗性を改善すること、また、がん幹細胞一つの指標であるコロニー形成能を減弱することから、筆者は、EGCGががん幹細胞の生存にも阻害作用を示す可能性を考えた。そこで、EGCGの抗がん作用機構に着目し、複数の候補遺伝子からEGCGにより発現量が低下する因子を同定し、また、この因子がメラノーマのがん幹細胞の維持に重要であることを見出した。この因子の機能解析及び制御機構の解明ががん幹細胞を標的とする新規がん治療法の開発に貢献できると考え、現在検討を進んでいる。また、テーマ②:EGCGセンシングの生体内イメージングにおいて67LRと直接結合するシグナルを伝達するタンパク質を成功に同定し、その機能解析を行うと同時に、EGCGセンシングの生体内イメージングに応用する系の樹立を行っている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
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