研究実績の概要 |
採用2年度目である本年度は、昨年度までに培養系を確立したナノ微生物菌株の顕微鏡観察、生理・生化学的性状試験および分子系統解析を進めた。その結果、ナノ微生物には、生活史の一部に矮小化細胞のステージがある種と、生活史の全般を通して矮小である種の2タイプに大きく分けられることを見出した。特に、前者の1種は、極域を含む幅広い環境に分布し、かつ、系統学的な新規性が極めて高く、プロテオバクテリア門の新綱分類群を代表する新目・新科・新属・新種Oligoflexus tunisiensis として記載した (Nakai et al., IJSEM, 2014)。後者の1種についても、アクチノバクテリア門における新属系統かつ汎存種であることが判明したため、その記載論文を国際学術雑誌に投稿し、査読を受けて現在修正中である。これまでの課題として、環境ナノ微生物の細胞数が少ないために、実験に使用できる十分量の極域環境試料を確保することが挙げられたが、平成26年5月にアラスカ北極圏、平成27年1月に南極大陸(平成26年11月25日~平成27年3月13日の期間、第56次日本南極地域観測隊に同行)での試料採取に成功した。昨年度の中間評価において、ナノ微生物を含む極域試料、特に、古環境情報が保存された永久凍土や湖底堆積物中の遺伝子解析が遅れているという評価となったが、本年度に採取した試料を用いて、迅速に解析作業を進める。なお、一部のサンプルについては、系統分類に汎用されるrRNA 遺伝子断片のPCR 産物の網羅的シークエンスが完了し、その分子系統解析に既に着手している。
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