研究実績の概要 |
採用3年度目である最終年度は、これまでに分離したナノ微生物菌株の生理・生化学的性状や分子系統学的位置などの情報を整理した。その結果として、自然界に生息するナノ微生物を3タイプに分類した。タイプ1は、生活史のある一時期で細胞が矮小化する。これには昨年度に報告したプロテオバクテリア門の新綱微生物Oligoflexus tunisiensis などが含まれる (Nakai et al., Int J Syst Evol Microbiol, 2014)。タイプ2は、タイプ1とは対照的に、終生を極小サイズのままで過ごす微生物である。本年度、このタイプを代表するアクチノバクテリア門の新属微生物Aurantimicrobium minutum の発見を研究論文として公表した (Nakai et al., Int J Syst Evol Microbiol, 2015)。16S rRNA 遺伝子の配列にもとづく系統解析によると、A. minutum は世界各地の淡水環境に広く分布するLuna2 とよばれる系統に帰属した。最後にタイプ3として、環境ストレスなどによって細胞が矮小化する微生物が見いだされた。この微生物は北極域の温泉だけでなく、中国のゴビ砂漠や日本国内の土壌からも同じ遺伝型のものが分離された。さらに、その系統分類の結果、プロテオバクテリア門の新しい科を代表する系統であることが判明したため、論文公表の準備を進めた。 また、当初の予定より遅れていた極域試料中の微生物相解析については、昨年度アラスカ北極圏や南極大陸で採取した試料を用いることで、16S rRNA 遺伝子の網羅的な塩基配列解読を複数実施することができた。
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