研究課題/領域番号 |
13J03462
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小野原 彩香 同志社大学, 文化情報学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 系統学 / データサイエンス / 言語地理学 / 文化情報学 / 空間統計 / 統計分析 / ネットワーク |
研究概要 |
本研究は言語変化の微細な動態を明らかにするために、地域性、社会構造の異なる複数の小規模な地域を対象として、言語形式と外言語的要素との関係を定量的に明らかにし、言語動態を把握することを目的としている。 平成25年度の研究活動では、主に香川県小豆島、岐阜県揖斐川上流を対象地域とした。今年度の分析では、当該地域における言語形式と言語変化の要因となりうる言語以外の各種の現象を対象として、重回帰分析、一般化線形モデルへの当てはめといった分析を行い、両者の関係を多変量的に捉えた。また、同地域の言語現象について、調査対象集落間のコスト距離の算出、言語形式同士の系統推定、中心性指標を用いたネットワーク分析といった数理的分析を行い、言語情報と地理情報の関係について定量的に捉えた。今年度行った一連の分析については、数理的分析とともに言語学的解釈も行った。 言語形式を対象とした系統推定に関しては、海外における研究動向を参照し、Phylogeneticsの分野だけではなく、近年では、言語学分野においても使用頻度の高まっている系統学的一手法であるNeighbor Netを用いた数理的な言語分析を行った。この分析においては、比較言語学的手法との方法論的な違いを明確に示しながら、検討を行った。このうち、小豆島を対象とし、系統推定を用いた成果については、国際会議International Congress of Linguistsにて発表を行った。 日本国内を対象とする調査活動では、香川県小豆島にて、アクセントと語彙を中心に民俗現象を含めた現地調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、1. 外言語的要素の収集 2. 統計解析および数理解析 3. 現地調査 4. 既存研究結果への方法論の適用 5. 実験計画法、社会調査法に基づいた方言調査計画の設計及び実施 6. 第3者が事実の検証を行うための音響分析に耐えられる録音音声データの収集 といった研究計画を立てた。このうち、今年度までに計画の半数に当たる「3. 」までの課題を終了した。
|
今後の研究の推進方策 |
各地域のデータから得られた数理的分析の結果から見えてきた言語動態の傾向を踏まえ、全国規模の調査であると『方言文法全国地図』および『日本言語地図』の数理的分析に着手する。ここで、小規模地域と大規模地域での調査の違いやそれに伴う調査データの種類や量の違いを整理する。これを踏まえて、小規模地域での調査方法と大規模地域での調査方法の相互関係、小規模地域の結果の大規模調査結果への反映の是非、もしくはその逆について整理する。また、小規模地域で行ったのと同様に統計的思考に基づき、調査計画を立てる。 音響分析に耐えうるデータをサンプリングした後、praatなどの音声解析ソフトを用いて、数理的方法論を用いた分析の是非について検討を行う。
|