研究課題/領域番号 |
13J03479
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飯田 祐己 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 強相関電子系 / 磁性 / 低温物性 / 超伝導 / 空間反転対称性 |
研究概要 |
今年度は、空間反転対称性の破れた結晶構造を持つCeRhSi_3とCeIrSi_3の圧力誘起重い電子系超伝導の側面に注目して詳細な電気抵抗測定を行った。 1. CeRhSi_3は、磁性と超伝導の共存する圧力領域において電気抵抗測定から観測される超伝導転移はブロードである。このブロードな超伝導の起源として超伝導ゆらぎの存在が議論されているが、今回の測定において超伝導転移の幅には試料依存性があり、また、同一試料に対し研磨を行うと転移幅が変化することから、ブロードな転移にはひずみが関係していることを明らかにした。さらに、同一結晶構造のCeIrSi_3では、研磨等の整形した試料は、過去に報告のない、常圧で超伝導転移を示す結果を得た。この超伝導は、臨界電流が小さい特徴をもち、アニール処理を行うと超伝導転移が消失することから、試料整形時に生じた歪が試料に残り、局所的に圧力がかかった状態となりフィラメンタリーな超伝導を起こしていると結論づけた。本研究により、正確な超伝導特性を調べる上で局所的な歪を考慮する必要があることを明らかにした。 2. CeRhSi_3の磁性と超伝導の共存相内の横磁気抵抗測定より磁場-温度相図を作成した。過去の縦磁気抵抗測定では1相に見えていた反強磁性相が2相に分かれていることを示唆する結果を得た。CeIrSi_3の低圧域の反強磁相内に一次の相転移と考えられるヒステリシスの存在を見つけた。同物質の超伝導を理解するうえで複雑な磁気相との関係を考慮する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性と超伝導の共存領域におけるブロードな超伝導転移の起源として、これまで考慮されてこなかった局所的なひずみが、フィラメンタリーな超伝導を誘起することを明らかにした。この現象は他の物質でも見られ正確な超伝導特性を知る上で重要な成果であり、かつ研究目的である圧力誘起重い電子系超伝導の性質を理解する上で重要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度見出した局所的なひずみが誘起する超伝導の圧力下の超伝導特性及び、CeIrSi3の正方晶面内の電気抵抗測定より圧力-磁場-温度相図を作成し、磁性と共存する超伝導の性質についてさらに研究を推進する予定である。
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