研究課題/領域番号 |
13J03523
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齋藤 翔 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | K理論 / delooping / Tateベクトル束 / Tate中心拡大 / 無限トポス |
研究概要 |
今年度の主な研究成果は、完全圏のK理論のdeloopingに関する一般的な定理に幾何的な意味付けを与え、それを用いることによって、ループ群のTate中心拡大を導来代数幾何の枠組みにおける簡明な方法で構成し直したことである。ループ群の表現論においては、Tate中心拡大と呼ばれる対象が重要な役割を担う。Tate中心拡大は、古典的には行列式理論と呼ばれる概念を用いた構成によって与えられたが、BeilinsonとDrinfeldは代数的K理論とホモトピー論を用いることでTate中心拡大により簡明な解釈を与えられるはずであるという構想を提唱した。彼らの構想は"vague picture"として提示され、その正確な定式化と証明を問題として掲げた。本年度の研究において、Lurie等によって近年になって発展させられた無限トポスの理論を用いればBeilinson-Drinfeldの "vague picture" を正確かつより包括的な形で定式化できること、さらに、過去に証明していた完全圏のK理輪におけるdelooping定理がまさにその証明を与えていることを明らかにした。具体的には、K理論空間自体を無限トポスにおける群対象とみなし、そのtorsorsの分類空間がTateベクトル束のK理論空間と同値となる、という分類定理を示した。この結果はまた、Tate中心拡大の理論を高次元に拡張するための方法も示唆している。実際、旧来の行列式理論を用いた具体的な構成は、次元が高くなるほど構造が複雑になり、3次元以上では扱うことが実質的には困難になる。それに対してく分類定理を用いた構成は抽象的でより簡明であり、その高次元における類似を直ちに定式化することができる。その意味でこの結果は高次元化への適切な道筋を与えていると考えられる。その道筋に沿って実際に高次元化を行うのは今後の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究において与えた分類定理は当初の計画において想定していたものではなく、研究が進む中で得られた予想外の良い結果であった。この意味で本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究において与えた分類定理を高次Tateベクトル束に拡張することを目下の目標として研究を進める。この分類定理においては、負の1次K群がNisnevich局所的に消えるというDrinfeldの定理が用いられているが、2次以上の負のK群についてはNisnevich局所自明性が成り立たない。この問題点に対応するために、Robaloによる非可換Nisnevich位相の理論などを利用しつつ研究を進めていく予定である。
|