研究概要 |
設計したデンドリマーの内部空孔を利用した金属・金属酸化物クラスター等の精密合成と、それらの新しい触媒機能の開発を目的として研究を行い、以下の知見が得られた。 i)コア-シェル型デンドリマーを用いたサブナノパラジウムクラスターの選択的合成と電子状態の制御 第三世代のポリアミンデンドリマーの末端にポリベンジルエーテルデンドロンを修飾したハイブリッドデンドリマーを用いると、構成原子数を4に制御したサブナノパラジウムクラスターを調製できた。さらに、このコア・シェル型デンドリマーのシェルの世代数を増大させることで、クラスターの構成原子数を制御したまま電子密度を減少させることに成功した。これらPdクラスターは電子密度の低下に伴い、オレフィンの水素化反応においてより高い触媒活性を示すことが分かった。 ii)デンドリマー内包ロジウムカルボニルクラスターの選択的合成と芳香族ニトロ化合物の選択的還元 末端に長鎖アルキル基を修飾したポリアミンデンドリマーを用いると、CO雰囲気下、サブナノサイズのロジウムカルボニルクラスター[Rh_5(CO)_<15>]-を選択的に調製できた。得られたデンドリマー内包Rh_5クラスターは、CO及びH_2Oを還元剤とした還元反応において特異な化学選択性を示し、還元性の官能基であるアルデヒド、ケトン、オレフィンなどを分子内に有する芳香族ニトロ化合物のニトロ基のみを還元させた。 iii)デンドリマーを反応場とした近接銅中心の創成とフェノール類の位置選択的カップリング反応 ポリアミンデンドリマーの内部空孔に銅錯体を加えると、近接銅中心が自発的に形成することを見出した。このデンドリマー内包銅触媒は、2,6-ジメチルフェノールからジフェノキノンへの位置選択的な酸化約カップリング反応を高選択的に進行させ、従来の選択的な触媒であった酵素(mushroom tyrosinase)などと比べて、10倍以上高い触媒活性を示した。
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