昨年度はラベリングと攻撃評価に関して,ラベリングと攻撃評価の関係性に関する,理論的知見と応用的知見という2つの知見を蓄積すべく,研究を行っている。 本研究員のこれまでの研究では,場面想定法や実験などにおいて実際に第三者の目の前で集団間葛藤が起きるという場面を用いて検討を行ってきた。しかし,現代の日本において集団間葛藤の現場に居合わせるということは稀である。多くの第三者はその集団間葛藤をインターネット上の記事や新聞,ニュースなどで知ることとなる。そして,毎日のように情報は更新され,集団間葛藤だけではない様々な種類の情報が行きかっているのが現代社会である。 昨年度の研究ではこの点に焦点をあわせて、複数の記事に対する記憶という観点から検討を行った。その結果、ネガティブ・ラベリング戦略は第三者に対して集団間葛藤に注目させるという影響をもつことが示された。さらに、その影響は加害者に関する記憶についてのみである。 以上より,新聞記事から情報を得るという状況においては,ラベリングが攻撃行動の印象に大きな影響を及ぼすとはいえないものの,そもそもその集団間葛藤の情報そのものを記憶していられるかどうかに関わることが示唆された。
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