研究課題/領域番号 |
13J03545
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 孝子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 唐 / 五代 / 書儀 / 書簡文 / 書式 / 書札礼 |
研究実績の概要 |
本年度は、書札礼に関わる言語表現以外の要素、書式や形態的特徴に着目して考察を進めた。 『敦煌写本研究年報』第9号に発表した「敦煌発見の書簡文に見える「諮」――羽071「太太与阿耶、阿叔等書」の書式に関連して」では、羽071に記される僧からその世俗の家族に宛てられた一通の書簡を扱う。この書簡に関聯して、唐から五代期の書儀・書簡文に見える「諮」の用法について考察した。「諮」を指標として導かれる文言は、本文から追伸・添え書きの形式へと移行し、さらに主となる書簡に附属して別の用紙に記す場合の書式「咨目」として発展したと結論づけた。羽071は家書でありながら、官人間の起居状のように儀礼としてのあいさつ文と通信文としての用件が分けて記されるほか、別紙や咨目といった書儀に見える僧侶らの書札礼に類似する形式が取り入られており、唐末から五代、宋への私信の書式の変遷を見る上で、非常に重要な資料となりうるものであった。 『敦煌学』第31輯に投稿した「唐五代時期書信的物質形状与礼儀」では、唐五代期の書札礼について、書簡に用いられる言葉遣いではなく、物理的な側面から考察を加えた。材料や字体、紙数などによって示される相手への敬意、礼儀作法の変遷を確認した。斜封による重封、単書・複書・三幅書といった書式の別はいずれも数の多さにより礼の軽重を示し、短封はその特殊性によって敬意を表していたのである。 「敦煌学国際学術研討会・京都2015」における「唐五代期の書簡文「短封」について」と題する口頭発表は、敦煌発見の書儀・応之『五杉練若新学備用』・『高野雑筆集』の記述をもとに、その書式や用途・機能などについて、その変遷を追いながら検討したものである。発表内容は加筆訂正ののち、来年度早い時期に公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は扱った資料は敦煌発見のものに偏っていたが、今年度は時代・地域ともに徐々に拡大することができており、研究はおおむね順調に進んでいる。当初の計画通り、私信の書式についての考察を進め、成果を日本・台湾の学術誌に論文として公表することができた。また、国際会議で口頭発表した内容についても順時公刊の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、『五杉練若新学備用』や『高野雑筆集』に收録される書簡文の分析を進めたいと考えている。前年度三月、「西北出土文献与中古歴史研読班」(中国・蘭州大学)において「《高野雑筆集》下卷所收録的兩封凶書相関問題研究」と題する報告を行い、参加者各位より貴重な意見を多数頂戴した。それを踏まえて大幅な加筆訂正を加え、最終成果を今年度五月に香港中文大学で開催されるYoung Scholars’ Forum in Chinese Studiesに提出しており、口頭発表を行う予定である。また、八月には中国・敦煌で開催される2015 Dunhuang Forum: International Conference on Dunhuang and Sino-Foreign Relationsへの参加も予定している。 本研究課題の基礎資料の多くは写本で伝世しており、本文のテキストクリティークが非常に重要な作業となる。そのため、前年度実現しなかった原本調査も行いたい。また、最終年度であることから、唐・五代期の僧尼の書札礼の特徴について、これまでの研究の体系化を図りたいと考えている。
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