研究課題
X線結晶構造解析によりPSI-Fd複合体の構造を4.2A分解能で解き明かすことに成功した。その成果は以下の三点である。1.PSI-Fd複合体の構造基盤解明:FdはPSIのPsaC、PsaE、PsaAと相互作用して複合体を形成していた。相互作用アミノ酸情報からFdの変異体を作製し、閃光分光法にてPSI-Fd間の電子伝達速度を測定することにより、これらのアミノ酸が生化学的にも重要であることを証明した。さらに、 [2H, 15N]ラベルしたガリウム(Ga)置換Fdを用いてNMRによるTCS法の解析を行い、結晶構造は溶液中での相互作用を反映していることを確認した。2.PsaFピストンモデルの提唱:Fd結合前後のPSI構造をCαで重ね合わせ、RMSD値を算出した。その結果、Fd結合によりPSIの表在性蛋白質PsaCとEが三量体の外側に向かって移動していた。さらにその動きは隣接する膜貫通ヘリックスのPsaFへと連続し、最終的にはルーメン側まで到達していた。PsaFのN末端はPSIを還元するPcが結合するサブユニットであり、PSIはPsaFを介してチラコイド膜内外の電子伝達蛋白質結合情報を共有するというモデルを提唱した。3.二分子アンテナモデルの提唱:PSI三量体には三分子のFdが結合しており、Ga異常散乱強度が強いFdほどPSIに接近していた。また、FdがPSIに結合することで三量体の境界面にあるPsaKと隣の分子のPsaBが互いに近寄る方向に移動していた。これによりPSI間の距離が縮まり、三量体間に於ける効率のよいエネルギー移動が可能になると考えられる。これらのことから、PSI三量体が協調して機能する二分子アンテナモデル、即ちPSI 三量体中でFdが最も強く結合しているPSIが電化分離を行い、残り二分子のPSIはアンテナとして機能して光エネルギーを供給するモデルを提唱した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemistry
巻: 54 ページ: 6052-6061
10.1021/acs.biochem.5b00601