研究課題/領域番号 |
13J03564
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高津 邦夫 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 共食い / 大型化 / 新規加入 / 移出移入 / 生活史 / 捕食者とエサ種のサイズ関係 |
研究実績の概要 |
捕食者が経験する相互作用は捕食者の個体数や個体の特徴の改変を通してエサ種への捕食圧に影響を与え、これは自然界における多様な捕食圧を生み出す原動力と考えられている。 しかし、これらを実証した研究の多くはとても短い時間スケールで行われているものが多く、動物につきものである「新生児の加入」や「個体の移出や移入」を考慮していない。新生児の加入や個体の移出移入は、捕食圧の強さの指標となる捕食者やエサ種の個体数や、捕食者とエサ種のサイズの大小関係を大きく改変する可能性があるため、これらを考慮することで捕食者の経験する相互作用がエサ種への捕食圧に与える影響は時間変異する可能性がある。本研究は、捕食者の経験する相互作用として共食いに注目し「捕食者の共食いは、捕食者からエサ種への捕食圧に影響を与えるが、その方向がエサ種のコホート間で異なる」ことを報告する。 共食いする捕食者としてエゾサンショウウオ幼生(サンショウウオ)を、そのエサ種としてエゾアカガエル幼生(オタマ)を使って実験を行った。孵化直後のサンショウウオの共食いを操作してその年に孵化したオタマのコホート(当年オタマ)と翌年孵化したオタマのコホート(翌年オタマ)に対する捕食圧を調べた。サンショウウオは共食いした場合に、共食いしなかった場合に比べ、当年オタマに対して1.5倍も強い捕食圧をかけた(共食いが捕食圧を強めた)。一方で、共食いした場合の翌年オタマに対する捕食圧は、共食いしなかった場合の半分以下だった(共食いが捕食圧を弱めた)。これは、サンショウウオの共食いがある場合には、共食いに成功したサンショウウオが巨大化して当年オタマに強い捕食圧をかけたが、翌年まで池に残るサンショウウオが非常に少ないため、翌年加入してきた小さな新生児オタマに対して捕食圧がほとんどかからなかったためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに初年度に予定していた研究はすべて実行することができた。また、予測していたような結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
過去二年間の研究をすべて論文化する。現在、5つの研究に取り組み、すべて予測に近い結果を得ることができている。しかし、文章化に至った論文は1つのみで、さらに、投稿受理まで至った論文はまだない。これまでの研究を通して、実験に必要な技術や実験計画を立てるうえで何を考えなくていけないかについて多くのこと学ぶことができた。しかし、論文化作業が遅いため、研究者として生きていくうえで必須である論文化能力を鍛えることが十分できていない。今年度は、これまでの研究すべてを論文化し、その能力を十分に鍛え上げたい。また、これまでの実験を通して明らかにしてきた捕食者の共食いと他種との関係が野外の自然池でも見られることを確かめるための野外調査を行う。
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