研究概要 |
地球内部の応力場の大きさは, 地震発生メカニズムの理解・地震発生予測のために, 欠かすことのできない情報である. それにも関わらず, その推定方法は確立していない. 平成25年度の研究では, 地震を発生させる応力の大きさについて, 4つのアプローチにより詳細に調べた. 1. 2011年東北地方太平洋沖地震前後での主応力軸方向の変化の調査 (1)地震の発震機構解を用いたアプローチ 地震の発震機構解(断層面・すべり方向)を利用して, 東日本の主応力軸方向分布を調べた. 主応力軸方向は, 2011年東北地方太平洋沖地震前後で変化しており, その様式は, 弾性理論から期待される変化と調和的であった. 主応力軸方向が変化した範囲を検出することを通して, それらの地域での絶対応力・断層強度の推定を行った. (2)地殻の偏向異方性を利用したアプローチ 主応力軸方向を独立に推定する目的で, 東日本のS波偏向異方性の分布を調べた. しかし, 東日本のS波偏向異方性は, 地球内部の断層面の分布にも依存することが分かり, 主応力軸方向の変化の妥当性を検証することができなかった. S波偏向異方性が断層面の影響を受けることは, サンアンドレアス断層近傍において知られていたが, それが日本でも同様であることが分かった. 2. 地球内部の主応力軸方向の空間的特徴を利用したアプローチ 1の主応力軸方向を詳細に調べることにより, それらが地形の影響を受けることが分かった. 地形に伴う応力変化を弾性理論により推定し, それを媒介にして応力・断層強度の絶対値の推定に成功した. 3. 2008年岩手・宮城内陸地震前後の応力場前後での主応力軸方向の変化を利用したアプローチ 2008年岩手・宮城内陸地震前後の主応力軸方向の変化を検出し, 応力の絶対値の推定に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の絶対応力・断層強度推定の計画で挙げられていた方法を, 概ね試してみることができた. 更に, 計画書の段階では見込まれていなかった異なる手段により, 応力・強度を独立に推定することに成功した. なお, 平成25年度に地震の潮汐応答に関する解析を行う予定であったが, データ準備に時間が掛かるため, 26年度に後倒しをした.
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今後の研究の推進方策 |
当初, 平成25年度に行う予定であった, 地震の潮汐応答に関する解析を, 平成26年度に行う. 平成25年度, このテーマで十分な成果を上げることができなかった理由は, 一つに, データセット(断層面が同定されている地震)の少なさが挙げられる. 今年度では, まず地震波の振幅を用いる方法によりデータ・セットを増加させた後, 再び地震発生と地球朝夕の関係を調べ, それにより絶対応力の独立に推定を行う.
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