研究概要 |
単一細胞内の局所パラメータ計測を行うため, ナノロボットの作製及び操作に関する研究を実施した. まず, フェムト秒レーザーを用いた二光子吸収露光によりナノメートルサイズのロボットを作製し, そこに熱伝導率の非常に高いカーボンナノチューブをプローブとして搭載することに成功した. このような機能性ナノマテリアルを任意の場所に搭載したナノロボットの作製は世界的にもほとんど行われておらず, マイクロ・ナノロボットへの機能付与の手法として非常に画期的であると言える. 特に近年はさまざまな機能を持つナノマテリアルが注目され研究されており, これらのナノマテリアルをナノロボットに搭載することにより, ナノロボットのさらなる多機能化が可能となると考えられる. 次に, このナノロボットを光ピンセットにより操作し, 細胞内への導入を試みた. 光ピンセットにより力学的な振動を印加しながら細胞への押し付けを行い, プローブの直接導入を試みたが, 光ピンセットのトラップ力が弱いため, 数Hzまでしか追随することができず, 細胞への直接の導入は不可能であった. そこで, ナノロボットに搭載したカーボンナノチューブの, 光熱変換効率が非常に高いという物性に着目した. カーボンナノチューブにレーザーを照射することにより熱を発生させ, 細胞膜に熱的刺激を与えることにより穿孔を行い, 目的のプローブを導入するという手法を提案した. この提案手法により実際に細胞を用いた細胞穿孔実験を行い, 蛍光ナノビーズを導入することに成功した. これにより提案手法の有用性が確認され, 細胞内環境測定のために機能化されたナノピーズ, もしくは遺伝子等を導入する手法として, 本手法が利用できる可能性があることを示した.
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