研究実績の概要 |
本研究ではジカルボン酸型有機配位子、ビピリジル型ピラー配位子、及び銅イオンにより構築され、異方的な結晶構造を有するピラードレイヤー型MOFを鋳型として用い、このMOFの異方的な結晶構造中に平面的に配列したモノマー間を内部架橋することで単層の二次元ポリマーを作製することを目的として研究を行った。具体的には二点アジド基を有するターフェニルジカルボン酸有機配位子(AzTPDC、モノマー)を用いてピラードレイヤー型MOFを作製し、この結晶構造中に平面的に固定化された有機配位子のアジド基間を内部架橋することで二次元的なネットワーク構造を有する二次元ポリマーの作製を目指した。 これまでの研究にて、AzTPDC、4,4’-ビピリジル(bpy)、及び硝酸銅三水和物を用いてアジド基を異方的に有するピラードレイヤー型MOF (AzPL(bpy))を作製した。これを四点プロパルギル基を有する架橋剤を用いて架橋することで架橋されたAzPL(bpy) (CLPL(bpy))を作製し、配位結合を分解することで高分子に変換した。このようにbpyをピラー配位子として用いた場合、アジド基の存在する平面同士の距離は十分に隔離されておらず、平面間においても架橋が生じることから二次元ポリマーの作製は不可能であるが、その一方でMOFの異方性を反映した3次元的なネットワーク構造を有する高分子ゲルの作製が期待できた。実際、上述の流れで配位子間を架橋し高分子合成を行ったところ、AzPL(bpy)は高分子ゲルに変換され、得られた高分子ゲルは異方的な膨潤挙動を示した。これは得られた高分子ゲルがMOFの異方構造を反映した異方的なネットワーク構造を有していることを示す結果である。一般に、高分子ゲルは等方的な膨潤挙動を示すものが大多数であることから、作製された異方膨潤高分子ゲルは極めて特異的な物性を示したと考えられる。
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