研究課題
温熱刺激は関節軟骨基質生合成を促進することや、軟骨細胞に熱ショック応答によるストレス耐性を与えるなどの報告がなされており、変形性関節症進行予防効果が期待されている。しかしながら、関節を構成する細胞(軟骨・半月板・骨・滑膜)における温熱刺激に対する反応の詳細は未だ不明な点が多い。本年度は、刺激温度・時間条件の違いが関節構成細胞(軟骨・半月板・骨・滑膜細胞)の代謝と生存性に与える影響を明らかにすることを目的として解析を行った。ブタ関節軟骨から軟骨細胞を単離し、32℃、37℃、41℃環境下で単層培養後、解析した。細胞増殖能は37℃で最も促進されたが、細胞生存率は32℃から41℃においては影響が認められなかった。mRNA発現は、細胞外基質関連遺伝子は温度が高い程促進された。さらに軟骨細胞代謝を詳細に検討するために、三次元培養(ペレット培養)下における温度環境の影響を解析した。その結果、コラーゲンの産生は32℃で最も生成され、グリコサミノグリカンは37℃で最も生成される結果が得られた。このことから、温度環境が軟骨細胞代謝において重要な因子であること、また単層培養下と三次元培養下では温度に対する反応が異なることが明らかとなった。最後に、関節構成細胞を32℃から49℃で10分間もしくは20分間温熱刺激を暴露し、24時間後に生存細胞数を解析したところ、10分間の暴露でな細胞数の減少は認められなかったが、20分間の暴露では47℃で軟骨細胞と滑膜細胞の減少が認められ、49℃では全ての細胞において著しく減少が認められた。このことから、細胞種によって温度耐容能が異なることが示唆され、また比較的高温でも10分程度であれば細胞死に至らないことが確認された。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究計画として、刺激温度・時間条件の違いが関節構成細胞(軟骨、半月板、滑膜など)の代謝と生存率に与える影響の解析を挙げていたが、軟骨細胞において成果が予想以上に得られたため、研究を若干集中させた。
温熱刺激が軟骨細胞代謝に与える影響に関する実験は、刺激頻度・時間条件をさらに検討することで、臨床上有益な知見が得られる可能性が高いため、さらに推進させる。また、滑膜細胞や半月板細胞など他の関節構成細胞に関する実験は、リスクとなる温度条件の検討に焦点を絞り解析を進める。その上で、最終年度の計画として挙げている、関節構成細胞における熱ショック応答によるストレス耐性獲得のための至適温度条件を検討する。
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International Journal of Hyperthermia
巻: 30 ページ: 96-101
10.3109/02656736.2014.880857
巻: 30 ページ: 210-216
10.3109/02656736.2014.906048.