研究課題/領域番号 |
13J03632
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小境 夕紀 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 精子形成 / 細胞分裂 / ホスファターゼ / スプライシングバリアント |
研究概要 |
造精機能障害は男性不妊の原因の1つであり、そのメカニズムの解明や治療法の開発が強く望まれている。精子形成過程では、細胞分裂期(M期)の調節が極めて重要な機構である。p53誘導性ホスファターゼPPM1Dのノックアウトマウスは精巣形成に異常が見られ、不妊となることが報告されている。また、PPM1DはスプライシングバリアントPPM1D605およびPPM1D430が存在し、当研究室で見出したPPM1D430は精巣に特異的に発現する。本研究では、「PPM1D605およびPPM1D430のタンパク質レベル調節および細胞周期に及ぼす詳細な分子制御機構の解明」を目的として、PPM1Dのタンパク質量の変化がM期を制御するメカニズムを明らかにする。さらに、精子形成過程におけるPPM1D430によるM期調節機構を解析し、「PPM1Dの細胞周期における機能および精巣形成機構の解明」を目指す。本年度は、UVまたはアドリアマイシン刺激応答時のPPM1D605およびPPM1D430の量変化をestern Blottingにより解析した。その結果、刺激の量や時間に応じて、PPM1D430由来の分解産物の量が顕著に増加すること見出した。また、PPM1D605およびPPM1D430に特有なC末端領域の違いによるPPM1Dのタンパク質量や特異的な機能を同定するため、テトラサイクリン誘導shRNA発現システムの構築を目指した。まず、sh-PPM1D605、sh-PPM1D430、PPM1D605およびPPM1D430に共通な触媒活性ドメインsh-PPM1D (1-420)のコンストラクトの作製を実施した。以上、本年度は、「PPM1Dスプライシングバリアントの刺激に対するタンパク質レベルの違い」および「バリアント間の細胞応答の違いを明らかにするためのshRNA系コンストラクトの作製」を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PPM1Dスプライシングバリアント間のタンパク質レベル変化を見出した。また、バリアント間の細胞応答の違いを明らかにするためのshRNA系コンストラクトの作製を行い、安定細胞株の作製に取り組んでいる。これらは、PPMID605およびPPM1D430のタンパク質レベル調節および細胞周期に及ぼす詳細な分子制御機構の解明のために重要な発見であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
作製したsh-PPM1Dのコンストラクトを乳癌由来細胞株に導入し、Western Blotting・細胞免疫染色法により解析することで、各細胞周期におけるPPM1Dの影響や下流タンパク質や細胞周期因子に与える影響、および局在を明らかにする。さらに、精子形成におけるPPMIDの機能を解明するため、精巣由来の幹細胞系NCCIT細胞に、作製したsh-PPM1Dのコンストラクトを導入する。現在までに、NCCIT細胞へのplasmid導入は非常に困難であることが明らかとなっているため、来年度はNCCIT細胞へのplasmid導入効率の最適化を目指す。
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