造精機能障害は男性不妊の原因の1つであり、そのメカニズムの解明や治療法の開発が強く望まれている。精子形成過程では、細胞分裂(M期)の調節が極めて重要な機構である。脱リン酸化酵素PPM1Dのノックアウトマウスは精巣形成に異常が見られることが報告されている。PPM1DはスプライシングバリアントPPM1D605およびPPM1D430が存在し、PPM1D430は精巣特異的に発現する。そこで本研究では、「PPM1D605およびPPM1D430のタンパク質レベル調節および細胞周期に及ぼす詳細な分子制御機構の解明」を目的として、PPM1Dのタンパク質量の変化がM期を制御するメカニズムを明らかにする。さらに、精子形成過程におけるPPM1D430によるM期調節機構を解析し、PPM1Dの細胞周期における機能および精巣形成機構の解明」を目指す。 本年度は、PPM1D605およびPPM1D430に特有なC末端領域の違いによるPPM1Dのタンパク質量や特異的な機能を同定するため、テトラサイクリン誘導shRNA発現システムの構築を目指した。まず、PPM1D430のみを特異的にノックダウンできるコンストラクトおよび2つのバリアントを共にノックダウンできるコンストラクトを作製した。つづいて、それらをそれぞれ細胞内に導入し薬剤耐性細胞を選択し、安定細胞株を作製した。また、EGFP-PPM1D605、EGFP-PPM1D430、EGFP-PPM1D(1-420)を細胞内で発現させると、C末端の違いにより局在変化が観察された。さらに、それらのタンパク質はPPM1D605と比較してタンパク質の安定性が高いことも示唆された。これらの結果は、C末端が異なるPPM1D605およびPPM1D430のタンパク質レベル調節および細胞周期に及ぼす詳細な分子制御機構の解明のために重要な発見であると考えられる。
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