研究課題
真菌類細胞壁に含まれるキチンおよびキトサンの有効利用を促進するため、構造生物学的手法によりキトサナーゼに存在するキトサン結合モジュール(DD1,DD2)の立体構造を明らかにし、キトサン認識機構を解明することを目的とした。DD1およびDD2の立体構造は、核磁気共鳴(NMR)法を用いた溶液構造解析により明らかにした。大腸菌発現系を用いて得られた13Cおよび15NラベルDD1、DD2を用い、1H-15N HSQCおよび3次元スペクトルの測定を行い、主鎖シグナルの帰属を行った。つづいて、1H-13C HSQC、HCCH-TOCSY、CCH-TOCSYの測定を行い、側鎖シグナルの帰属を行った。さらに、NOESYスペクトルの測定を行い、NOEを帰属し、CYANAプログラムによって構造計算を行った。その結果、DD1とDD2ともに、2枚のbetaシートからなるbetaサンドウィッチ構造を有し、その上下に突き出すようにいくつかのループ構造が存在することが明らかになった。さらにNMRを用いたキトサンオリゴ糖の滴定実験の結果、キトサンはDD1とDD2のbetaサンドウィッチ構造の上部のループ領域に結合することがわかった。また、結合に関与するアミノ酸残基の比較を行ったところ、DD1の36番目のグルタミン酸残基がDD2ではチロシン残基に置換していることがわかった。そこで、このアミノ酸残基について、DD1のグルタミン酸残基をチロシンに変異させたDD1-E36Yおよび、DD2のチロシン残基をグルタミン酸に変異させたDD2-Y36Eを作製し、キトサン結合実験を行った結果、DD1ではGlu36のチロシンへの変異が親和性大きく低下させ, また, DD2のTyr36のグルタミン酸への変異が親和性の増大をもたらした。以上のように、部位特異的変異によってCBMのリガンド特異性のコントロールが可能であることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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