研究課題/領域番号 |
13J03703
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
風間 恭輔 北里大学, 獣医学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心血管疾患 / アディポサイトカイン / omentin / 高血圧症 / 血管壁リモデリング / 心筋細胞 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
<背景・目的>Omentinは主に健常者の内臓脂肪組織に多く発現する新規アディポサイトカインである。疫学調査において、肥満症による血中omentin濃度の低下が高血圧症やアテローム性動脈硬化症などの心血管疾患の発症率増加と相関するという報告は非常に多い。このことから私はomentinが肥満に併発する心血管疾患の進展に関わるのではないかとの仮説を立て研究を行ってきた。本年度は、①omentin長期間投与のラット肺高血圧に及ぼす影響を明らかにすること、②omentinの心筋細胞死に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、研究を進めた。 <結果>①Omentin長期間投与はmonocrotalineによる肺高血圧を抑制したが、その機序は肺内肺動脈における弛緩反応障害の改善、及び動脈壁リモデリングの抑制であることが示唆された (Kazama K et al., Biochem Biophys Res Commun. 2014)。②Omentinはdoxorubicin (DOX)によるミトコンドリア由来活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)産生を介したcleaved caspase-3発現誘導を阻害することでラット横紋筋由来株化心筋芽細胞(H9c2細胞)の細胞死(アポトーシス)を抑制することが明らかになった。さらにミトコンドリア呼吸鎖複合体I阻害薬rotenoneはDOXによるH9c2細胞死、cleaved caspase-3発現誘導およびミトコンドリア由来ROS産生を抑制することを確認した。これらの結果からomentinは血管のみならず心臓においても保護作用を示す可能性が示唆された(Kazama K et al., Biochem Biophys Res Commun. 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はomentin長期間処置がラットにおいてmonocrotaline誘発肺高血圧を抑制することを明らかにし、海外の学会で発表した(American Heart Association High Blood Pressure Research Scientific Session 2014)後、論文にまとめ公表した(Biochem Biophys Res Commun. 2014)。この結果と過去の我々の結果から、in vitro, ex vivoおよびin vivoにおけるomentinの高血圧症に対する血管保護作用が明らかになったため、次にomentinの心臓における作用を検討した。そしてomentinがdoxorubicinによる心筋細胞死を抑制することを明らかにし、学会で発表した(第27回北里大学バイオサイエンスフォーラム)後、論文にまとめ公表した(Biochem Biophys Res Commun. 2015)。さらにこれまでのomentinに関する研究成果を総説として論文にまとめ公表した(Nippon Yakurigaku Zasshi. 2015)。このように着実にデータを出し成果をまとめ、国内外での学会発表も積極的に行っていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ肥満動物におけるomentinの作用は明らかになっていない。今後は高脂肪食給餌マウスや肥満猫などの血圧及び血中omentin濃度を測定し、相関関係を検討していく。
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